自宅の猫は可愛がっていた
飯田さんらは今年4月、動物愛護法44条1項(殺傷罪)違反の疑いでTを刑事告発した。同月下旬に群馬県警はそれを受理し、7月8日にTは埼玉県内で逮捕された。
「動物愛護法違反の事件で警察が県をまたぎ捜査し、逮捕したケースは今回が初めてかもしれません。手がかりが少ない中で群馬県警の地道な捜査がTの逮捕につながりました」
と説明するのは長年、動物問題に携わってきた動物愛護推進員の川崎亜希子さん。
「逮捕当時、Tは自宅で猫を4匹も飼っており、どの猫も太っていて健康的だったそうです」(全国紙社会部記者)
自宅の猫を可愛がっても、空き家の猫には目もくれなかった。それどころか世話をしているふりをして関係者にも会っていた。
「猫は好きじゃなかったと思います。自分がエサも水もあげなかったら死ぬことはわかっていながら、知らんぷり。なぜそんなことができたのか。自分が殺したという罪悪感を持っているのか聞きたい」(前出・岩崎さん)
前出の事情を知る人物はTが猫のNPOを立ち上げようとしていたことも証言した。
「“寄付もすぐに集まるし、猫の避妊去勢もできるようになる”と周囲に持ちかけていたそうです」
まじめに世話をしようとしていたのかもしれないが、前出の人物は疑問を投げかける。
「Tはよく猫を病院に連れていっていました。でも、“治療にいくらかかった”とか“大事にしている”とか周囲にアピールをしていたようです。猫の面倒をみれば褒められる、周囲に認められたくて世話をしていると感じました」
その後、金銭的な理由もあり、病院通いも途絶えた。
「Tは猫の避妊去勢をせずに増やしたり、次々に拾ってきてしまう典型的なアニマルホーダーではないと思います。猫は自分の自己顕示欲を満たすためのものとしか思っていなかったのでは」(同)
Tとはどのような人物だったのか
Tとはいったいどのような人物だったのだろうか。
複数の関係者によると10年ほど前からみなかみ町に頻繁に訪れるようになったとみられる。朝一の電車で訪れ、夕方には帰るの繰り返しだった。
「何しにどこから来ているのか、仕事をしているのかも誰も知らない」(同町の住民)
中には「感じのいい人だった」と話す人もいた。
「人柄がよくて穏やかで物知りでした。大柄でいつもタオルを巻いて、作業着姿。でも清潔感があって、おしゃれ好きできっちりしていた印象です」(別の住民)
一方で、変わりようを覚えていた男性がいた。
「関係者が“これから猫はどうするんだ? どこかに相談しよう”とTに言うと“俺だっていろいろ考えているんだ!”と怒りだした。机や椅子を蹴り、怒鳴ることもあったようです。暴れているところを見かけた人もいました」
さらに意外な事実を前出の男性が証言する。
「子猫が生まれ、また増えてしまうので関係者が困っていた。(川に)流してしまおうか、と話しているとTが“生きているんだからダメだよ”と、たしなめたそうです。
そのうちの1匹が弱くて、育つかわからなかった。そうしたらTが“俺が面倒みるから”と引き取ったとか」
その猫は件の空き家にいたとみられている。