日本中で起きる猫ネグレクト事件
さらにもうひとつの問題を前出の川崎さんが指摘する。
「所有権の問題があります。現在の法律では、いくら虐待を受けていても第三者が勝手に飼い主から動物を保護することができません。人間の子どもたちのように緊急保護などができるように法整備も必要です」
今回のように悪質でないにしろ、動物のネグレクト事件は日本中で起きている。
「罰金だけでは問題の解決にはなりません。飼育禁止などの処分も必要だと思います。人間の虐待や貧困なども実は動物の問題とも関係があるんです。人間の問題が解決すれば動物の問題は起きにくくなります。一緒に考えなければなりません」(前出・同)
前出・飯田さんは、
「Tには2度と動物を飼わないでもらいたい。言いたい言葉はたくさんありますが、それを言っても亡くなった猫たちは喜びません。あの子たちは私たちが動くことを待っていてくれたんだなと思っています。刑の重さだけではなく、逮捕されたことはひとつの成果かもしれませんが」
と話し、声を詰まらせた。
「あの子たちは飼われていました。1匹ずつ名前もついていて、ごはんをもらって、人にスリスリするのが当たり前だったんです。それが突然ごはんも水もなくなって、ドアをガリガリひっかいても外には出られなくて、……死んだ。残った子は仲間を食べて、頑張って生きていたんです。
Tひとりを罰して終わりではなく、こうした状況を人間側が起こさないこと。自分以外の生き物の痛みを知ることにつなげていかないといけません」(飯田さん)
Tは今、失われた命に対して何を思うのか──。