きっちりとやり遂げた“最期の仕事”

 その後も’97年、ポリープが2つ見つかり、内視鏡で切除。うちひとつは悪性の大腸がんだった。

 ’15年には急性心筋梗塞の緊急手術をするなど、病の種は尽きなかった。

 そんな渡さんが今回、過酷な闘病生活を続けながら、きっちりとやり遂げた“最期の仕事”があった。

 裕次郎さんと渡さんを起用した宝酒造『松竹梅』のテレビCMの撮影だ。このCMが今年で50周年を迎えた。お茶の間に広く親しまれてきたが、現在テレビ放送中の記念CMでシリーズ最終作となり、見納めとなる。

デビュー20周年記念特番で敬愛する石原プロ社長の石原裕次郎さんと。裕次郎さんを慕って事務所に入り、社長亡き後は後継者として事務所を支えた 撮影/本誌写真班
デビュー20周年記念特番で敬愛する石原プロ社長の石原裕次郎さんと。裕次郎さんを慕って事務所に入り、社長亡き後は後継者として事務所を支えた 撮影/本誌写真班
【追悼ギャラリー】初々しいデビュー当時や弟・渡瀬恒彦さんとのレアショット

「今年も『松竹梅』の最新CMが7月末から放送されていますが、完成させるまでにはずいぶんと紆余曲折がありました。

 渡さんは酸素吸入器が手放せず、かなりやせていましたので、どこかのスタジオで撮影するというのは、当初から難しかったようです。

 渡さんの自宅に撮影スタッフが行って撮るという案もありましたが、撮影予定だった春には、すでにコロナの問題が起きていました。撮影スタッフが大人数、闘病中である渡さんの自宅に行くことはできないと判断されたのです。

 そこで行ったのが、CG合成による制作です。しかも、松竹梅が50周年ということで、裕次郎さんと渡さんにCGで共演してもらうことになりました。できあがったCMを見た渡さん本人も、すごく驚いていましたが、満足されていたようです」(広告代理店関係者)

 因縁の名CM放映半世紀を記念して、裕次郎さんと渡さんが、合成技術で日本酒を酌み交わす、印象深い作品となった。