「これが最後の仕事になるかもしれない、という気持ちはありました」

 '97年に放送されたフジテレビ系ドラマ『ひとつ屋根の下2』。劇中で流れ、空前のヒット曲となった『ひだまりの詩』を歌った元ル・クプル藤田恵美は、当時の心境をこう振り返った。

「『ひだまりの詩』は藤田恵美さんと藤田隆二さんの夫婦デュオ、ル・クプルの5枚目のシングル曲です。ドラマの放送開始からおよそ1か月後に発売され、初週はオリコン78位と低調でしたが、ドラマが盛り上がるにつれ順位がどんどん上昇。7週目には2位にまで浮上しました。ドラマ終了後も売れ続け、200万枚近いセールスを記録。'97年の日本レコード大賞優秀作品賞を受賞し、紅白歌合戦にも出場。ふたりは一躍、時の人となりました」(音楽ライター)

はじめての売れる経験

 しかしその後、この曲を超えるヒット作には恵まれず、'05年に活動を休止。'07年に離婚を発表すると、事実上の解散となった。あれから13年がたったが、当時の心境を改めて聞いてみた。

デビューから2年半ほどたっていたころです。それまでは鳴かず飛ばずで、私たちもそろそろクビかな、辞めたら何しようかな、なんて思っていたときにお話をいただいたのが『ひだまりの詩』でした

『ひだまりの詩』はドラマに合わせて作られた歌だった。その歌い手を決める際、初期のアルバムを聴いていて藤田の声を気に入っていたドラマのディレクターが、ル・クプルを抜擢したのだという。

当初は“劇中で使われるかどうかわからない”という話だったんですが、3話目くらいで、長いシーンのときに曲をずっと流してくれたんです

 存在感を示したはずなのにエンドロールではタイトルも歌手名も紹介されなかった。気になった視聴者からの問い合わせがフジテレビに殺到。

ここまでヒットするとはまったく思っていませんでした。売れるっていうのが初めての経験だったので、とにかく毎日必死で。メディアへの露出も増えて、顔を隠さなくちゃいけなくなったり、コソコソ生活しなくちゃいけなくなったりして、ちょっと生きづらさも感じていました