“ブラック”が蔓延する芸能界

 芸能プロダクションの若手社員の薄給は今に始まったことではないが、時代は“令和”である。

 ジャニーズ事務所が求人を出していた転職サイト内を調べてみると、このような違法性が疑われる求人を出していたエンタメ業界の企業は、他にもあった。大手レコード会社ソニーミュージックグループの人事労務担当で≪固定残業時間52時間30分/月≫、大手放送局WOWOWの情報セキュリティー担当で≪固定残業時間50時間0分/月≫というものもあった。

 エンターテイメントの世界では、世間に名の通った企業でも、このような勤務体系がはびこっている。違法性のある求人をなぜいくつかの有名企業が出しているのだろうか。何か抜け道のようなものでもあるのだろうか……。

「抜け道のようなものはありませんね。違法となる可能性が高いと思います。2019年4月に改正労基法が施行されるまでは、今より多くの有名企業が45時間以上の固定残業代を設定していました。現在も変わらずに45時間以上に設定している企業は、法改正後も“そのままいってしまえ”という感覚なのではないでしょうか。ほかにも同じような企業があるので、問題にならないと考えているのかもしれません」(三浦弁護士)

 条文上は罰則があるものの、労働基準監督署の慢性的な人手不足などもあり、指導に動くことはまれだという。前出の三浦弁護士が続ける。

「“月45時間・年360時間”という残業時間の上限を罰則付きで設けて、長時間労働や過労死を防ごうと日本全体が取り組んでいます。2019年4月の改正労基法の施行で上限ができたことで、このような求人を出す企業は減ってきている印象でしたが、世間で注目されている有名企業が、月45時間を超える固定残業代の下で社員を働かせているということは残念ですし、周りに与える悪影響も大きいでしょう。すぐに労働条件を見直してほしいですね」

 芸能界という“夢を売る”業界で働く人たちが、長時間労働や薄給によって夢を見られないような状態になっているのは、本末転倒のような気もするけれど……。