と、ここまで読んで、最近の彼女も似たようなものだと感じた人もいるのではないか。事務所から契約を解除されたのを機に、YouTubeでの動画配信を開始。そこで見せるメイクやしゃべり方などの不安定さが話題になっている。なかでも「謝罪をもうしあげます」という動画は衝撃的だった。
これは、知人のバイオリニスト・高嶋ちさ子とのトラブルをめぐるもの。昨年、45歳で“未婚の母”となった彼女は高嶋にベビーシッターを紹介されたが、そのシッターによる息子への虐待を告発。逆に、厳しく反論されてしまった。彼女は、
「私の勘違いであり、そして虐待ではありませんでした」
として、約30秒、号泣しながら謝罪した。
とはいえ、朋ちゃんは20年以上、こうした不安定さをさらけ出し続けているともいえる。不調と復調を繰り返しながら、それでも芸能界で生き残ってきたわけだが、それはただの繰り返しではない。そのつど、注目度や好感度は右肩下がりに。今回の謝罪動画にしても、かつてならもっと注目され、同情もされただろう。高嶋とのトラブルは「怖いお姉さまにいじめられるシンデレラ」という構図に見えなくもないからだ。
しかし、彼女はもはやシンデレラではない。彼女に憧れた世代の女性も今では結婚して自分なりのシンデレラストーリーに満足していたり、それ以外の自己実現をしていたりする。なかなかお姫さま気分が抜けず“シンデレラおばさん”と化した彼女にかまっている余裕はないのだろう。
それでも、全盛期の彼女は素晴らしかった。歌と恋とが一体化した輝きを、これほどふりまいた人はいない。そこに魅了された者として、シンデレラ後の物語にもなるべく付き合っていきたい。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。