自分が被害者だということも気づいていない
12月某日のゆかりさんのインスタグラムの投稿を見ると、全裸画像と同じ顔があった。ゆかりさんは色白で目鼻立ちのハッキリした美少女。柔らかく透き通るようなもち肌は写真越しでもわかる。
男性の上にまたがり喘いでいるように見える画像は友人数名との集合写真から抜き取られていた。実際はテーマパークに女子高生が数人で変顔をして楽しんでいる健康的なショットが性行為の最中の顔に変換されるなど誰が予想できるだろうか。
ゆかりさんはめったに自分の顔写真は投稿しないが、友達とディズニーやUSJに行った特別なお出かけのときだけ自分の顔を公開していた。このときの画像が抜き取られ、合成されてしまったのだ。
いつフェイクポルノの存在に気づいたのだろうか。
「恥ずかしい話ですが、息子(21)がアダルトサイトで見つけたようで直接、妹である娘に“お前こんなことしているのか!”と詰め寄ったことから発覚しました。娘は何が起きているのかわからない様子でリビングにいた私のもとに息子から見せられた画像片手にかけよってきました」
ゆかりさん親子はその日のうちに警察に被害届を出した。サイトをくまなく調べて管理者に削除要請も出した。
「アダルトサイトなんて見たことがないので、仕組みも理解できないし、いろんなサイトに飛んでしまって管理者にたどり着くのにも苦労しました。削除要請をしてそのサイトからは消えたけれど、誰が投稿したのかということは管理者もわからないというんです。素人のSNSから勝手に顔写真を抜き取って合成して商売している人がいるっていうんです」(朋美さん)
ゆかりさんの当時の年齢は17歳、『児童ポルノ』、『名誉毀損』など多くの犯罪を犯しているが、犯人は捕まっていない。
「街を歩いていておじさんたちが私を見ると“この人あれを見たのかな”などと考えてしまい彼らがニヤニヤしているように感じてしまうんです。それで人混みを歩けなくなりました。勝手に保存されたりしていたらどうしよう、クラスメートが知っていたらどうしようって。これから先出会う人がこの画像を見ていたらどうしよう、って」(ゆかりさん)
母の朋美さんは、ゆかりさんを心療内科に連れて行き、安定剤をもらうことでパニックはおさまった。コロナ自粛と重なったことで外出しなくてすんだこともゆかりさんの心を落ち着かせたという。
「外に出るのが怖かったから自粛は助かりました。自分が見も知らぬ男の人たちから性の対象にされたことが悔しくて怖くてたまりません」
それでも、ゆかりさんは前を見ている。
「弁護士さんに相談しています。必ず犯人を捕まえたいと思っています。弁護士さんが言うには被害者はかなりの数いるようです。ただ、自分が被害者だということも気づいていない人がほとんどだというのです。
だって兄がいなかったら気づかなかったし、もしも友達が見つけたとしても教えてくれるかどうか。陰で言われるだけだったかも。誤解を解くチャンスさえ与えてもらえない。こういう被害があることを多くの女の子に知ってほしいし、お子さんの写真をむやみにアップしているお母さんたちにも注意を促したいです」
ゆかりさんは被害にあってからSNSを絶っていたが、今月からまたアカウントを取得。少しずつSNSの世界を広げつつあるが、自分の顔は「絶対にのせない」と力強く答えた。