また当時、別のインタビューでの「子どものころの自分に言ってあげたいこと」という質問には「早いうちに悪いことはすませとけヨ」と答えていた。30歳での初犯も「早いうち」ではなかったわけだが、さらに50歳での再犯となるとさすがにきつい。
そのうえ、初犯のあと、槇原がレコード会社などへのお詫び行脚をした際には「いや~運が悪かったよって軽い感じ」だったとする関係者証言も報じられている。やはり、犯罪について軽く考えていたのだろうか。
もっとも、軽く考えるだけで、実行しなければ犯罪ではない。そもそも、彼は29年前『どんなときも。』のなかで、正直に見られたい、好きなものは好きと言いたいと歌って世に出た男だ。考えたことは口にしたいし、歌にもしたいのである。
問題は、フィクションと現実との境界が曖昧になりやすいという、アーティストが陥りがちな落とし穴だろう。
例えば、彼にはストーカーや監禁をテーマにした『SPY』『Hungry Spider』といった曲もある。ともにドラマのタイアップつきでヒットした。フィクションなら何らかまわないわけだ。
それこそ、「可愛い万引き」というパワーワードも、曲のタイトルやテーマならありなのではないか。善人的な白マッキーより、ちょっとダーティーな黒マッキーのほうが好きな筆者としては、むしろ聴いてみたい気もする。ただし、もうタイアップはつかないかもしれないが……。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。