国際事情に明るいという意味では、3姉妹全員がシングルマザーという道端3姉妹も同様だ。長女のカレンは、'04年に長男、'07年に次男を出産した未婚の2児の母。先の宝泉さんの言葉を借りるなら、彼女らもまたシングルマザーの母親に育てられたバックボーンを持つ。
カレン自身、「最初からシングルマザーでいこうと思っていた。結婚した人だけが子どもをつくるとか、そういう順番が必要というようには感じていなかった」と、ひとりで育てるつもりだったことを明かしているように、未婚という選択に戸惑いはなかったという。
さらには、三女のアンジェリカから「大変だったことは?」と聞かれた際には、「電球を換えるのに天井に届かないとか。男の人の手があったらいいだろうなと思うことはあるけど」と語っている。彼女にとって“夫”とはその程度のものなのだ。
「シングルマザーと呼ばずに、夫不要のライフスタイルを選んだ─“夫不要婚”という言い方があってもいいんじゃないか。シングルマザーではなく、ノーモアハズバンド(笑)。“夫いませんけど何か?”くらいの感じで、当たり前のように言っていいはず。
もちろん、芸能人と一般の方では環境や状況は違いますが、“シングルマザーはかわいそう”“そろそろ再婚したほうが”などと、後ろ指をさされる時代ではない」(吉田さん)
ここに挙げた5人の女性は個性が強く、経済力もあるため未婚の母のモデルケースにするには極端な例かもしれない。だが、家父長がいて母親が家事を担うといったかつての家族モデルが崩壊している現代。多様なライフスタイルが広がる中で、家族の構成員の中に夫がいないという生活を特別視する必要などない。
多様化し複雑化するこれからの家族の形
「フェミニズムを研究されている心理学者の小倉千加子さんが『結婚の条件』(2007年)という本の中で、女性が結婚する条件を学歴別でカテゴライズしています。
当時は、“高卒の女性は生存のために結婚する”“短大卒の女性は依存のために結婚する”“大卒の女性は(自分の仕事や生活を)保存するために結婚する”といったことが書かれています」(吉田さん)
結婚には、生存、依存、保存があると分析し、当時は学歴(収入)によって夫との関係性が変わる─。時代は進み、今は夫すら必要ない層が登場。「年収300万円のシングルマザーだったとしても、子どもと楽しく暮らしている家庭もある」と吉田さんが話すように、多様化している=複雑化していることを意味する。シングルという言葉とは裏腹に、ひとりで育てる理由は十人十色だ。
「多様性を語るのであれば、アンタッチャブルな話題にするのではなく、オープンに話せる状況にならなければいけません。
芸能人はアイコンでもありますから、未婚を含むシングルマザーのポジティブな面を語る人が出てきてもいい。そういう人が登場することによって、より理解も深まるはず。スキャンダルにする必要はないが、フタをするように語られないのも不自然」(宝泉さん)
ママタレならぬシングルマザータレントが台頭したとき、“ノーモアハズバンド”は当たり前になっているかもしれない。