今月、不二家が創業110周年を迎えた。舌をペロッと無邪気に出して、店先を通る人々に笑いかける看板娘・ペコちゃんも人間でいえば古希の年。戦後まもなく誕生した一企業のキャラクターは、やがて国民的アイドルへ。その笑顔に救われたファンが証言する唯一無二の魅力とは──?

ペコちゃん生誕70周年

 どんな悪天候でも曇りない笑顔で毎日、店頭に立ち続ける少女がいる。老舗の洋菓子チェーンで知られる株式会社不二家の人気キャラクターとして誕生した“永遠の6歳”、ペコちゃんだ。大きな瞳にぷっくりの頬、何かイタズラでも企んでいるようにぺろっと出した舌──思わずにっこり微笑み返してしまう、あの姿。

 そんな彼女も今年、人間でいえば古希。生誕70周年を迎えた。

ペコちゃんの熱心なファンには40代、50代の大人の女性も多い」と、同社の経営企画室広報IR部広報室(以下、広報室)土橋美紀さんは言う。

ペコちゃんのイベントを開催すると、子どものころペコちゃんが大好きだった方が子どもを連れて来てくださったり、世代を超えて全国から足を運んでくださる印象です

 ペコちゃんといえば、オーバーオール姿が定番ルック。だが、季節や流行にあわせたファッションをこれまで多数披露してきた。その服装に注目するファンは多い。

 兵庫県に住むユキさん(仮名=34)がペコちゃんに出会ったのは、ペコちゃんと同い年の6歳のとき。お母さんに連れられた買い物の途中で、店頭のペコちゃんに釘づけになった。以来、現在までずっと“ペコラー”を自称する。

「定期的に変わるペコちゃんの洋服が楽しみでした。ペコちゃんは今日、どんな服を着てるの? とワクワクして、お買い物がさらに楽しくなりましたね。大人になってからは不二家の隣のスーパーで働いていたので、毎日、可愛い服を着たペコちゃんを見られるのがうれしかったです」

 デビュー当時から、ペコちゃんは服装に季節感を取り入れていた。かつて社内には人形課があり、社員自らシーズンごとに着せ替え、デザインし、縫製さえ担ったという。

 1958年、当時の皇太子殿下のご成婚ブームに沸いていた時代は、美智子さまにちなんだテニスウエアを披露2012年には日本の音楽シーンを彩る女性アイドルさながらにチェックのワンピースを着こなしたまた、2018年の平昌冬季オリンピックにあわせてフィギアスケートの衣装で日本代表の健闘を祈ったこともある