デジタルコンテンツの配信サイトcakesに掲載された、夫婦ユニット“ぱぃちぃ”さんが書いた「ホームレスを3年間取材し続けたら、意外な一面にびっくりした」という記事がネットでいわゆる“炎上”した。cakesのクリエイターコンテストで優秀賞を受賞したことで注目を浴びたからだろうが、何が“炎上”につながったのか?
記事によれば、夫婦ユニットの妻のほうが20年以上前の子どものころ、新宿にあったダンボール村で路上生活をする人たちの姿を「秘密基地のように見え、なかを確認したくなった」ものの、母親に止められた経験があり、それ以来「ホームレスをあまりにも狭い範囲のイメージに留めたまま」に、「なんとなく違和感に近い興味を感じていた」という。
社会的状況に対する認識の甘さ
そこでネットでググり、地域でホームレス支援を行っている人に同行し、簡易な小屋を建ててかまどや食料などを手作りして暮らす「田舎の河川敷に住むホームレスの魅力を知ることとなった」と書くが、それは「自分とは違う生きかたを覗きに行きたい気持ち」であり、「日常生活をしているなかでは触れる機会が少ない体験をおじさんたち(注ホームレスの男性たち)を通してできるという刺激が根本にはある」とも書いていた。
生活に困窮するなど、何らかの事情から住む家をなくしてホームレス状態にある人たちを、刺激を求めて覗きに行きたいと書いてしまうのはどうだろう?と、いちライターとして首をひねるが、生活困窮者の支援を続け、コロナ禍に於いてはネットカフェを追い出された人たちへの支援も行っている『一般社団法人つくろい東京ファンド』のみなさんはどう思われているのか。お話を伺ってみた。
「ホームレス状態にある人がユニークなパーソナリティーを持っていて面白いということは実際にあることですし、そうした方と個々の関係性を結ぶのはまったく否定されるものではなく、それを書くことも自由だと思います。
また筆者のご夫婦は3年間にわたって関係性を築かれていて、そこは認められるべきです。今回のいちばんの問題は、この記事をcakesというプラットフォーマーがホームレス問題を取材した記事として発信したことにあると思います」
と、cakesの社会的状況に対する認識の甘さを指摘するのはスタッフの佐々木大志郎さん。佐々木さんは2014年から同ファンドに勤務、それ以前も生活困窮者支援をしてホームレスの人たちと長く関わってきた。佐々木さんはさらに、
「ユニークなおじさんに出会った、面白エッセイであれば問題にならなかったかもしれませんが、ホームレスという社会的な状態を全面に出して記事とするなら、そこにはハレーションは必ず起こるでしょう」と言う。