安易に地上波でリメイクするよりも……

 今回の2番組の復活を、テレビの専門家はどう見ているのか。『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)などに出演するテレビ解説者の木村隆志氏にも話を聞いた。

今はテレビの総個人視聴率が落ちている時代です。コロナウイルスの影響で人々が家にこもり、一時的に視聴率が回復した時期もありましたが、その後は録画視聴やネット動画を見る人が増えて、特に午後9時以降の視聴率はかなり落ち込んでいます。テレビ局としては番組放送による広告収入以外の稼ぎ方が求められるようになっていて、過去の人気作という財産を利用する流れは以前からありました。その流れが、コロナウイルスによるCM収入減でさらに強まったと考えられます

 特に『電波少年』は“固定ファン”も多い番組だったが、今回日テレはなぜこの2番組の復活に踏み切ったのだろうか。

現在の地上波は13〜49歳、中でも特に若者狙いの傾向があるため、より上の世代を狙った往年の番組は戦略から外れます。とはいえ、固定ファンがいる番組にはコンテンツ自体の力があるため、ネットや有料チャンネルで配信・放送すればお金になります。その上、さまざまな人の目に触れる地上波と違って"観たい人だけが観る"動画配信サービスなら、視聴率も批判の声も気にする必要がありません。たとえば、不祥事を起こした芸能人でも、観たい人がお金を払って観る映画や、自分からアクセスする必要があるネットなら受け入れられるといった事実にも似ているかと思います」(木村氏)

 しかし、固定ファンがいることは、“復活”という観点からするといいことばかりではないようだ。

根強いファンがいるような番組は、安易に地上波で視聴率獲得を前提にしたリメイクをしてしまうと、反感や不評を買うことがあります。その点、視聴率に関係のない動画配信サービスや有料チャンネルはリメイクを配信・放送しやすい場となっています。今年、『東京ラブストーリー』のリメイクが地上波ではなく、フジテレビの動画配信サービス"FOD"で配信されたのも、そういった事情があってのことでしょう。

復活のタイミングが重なったのは偶然だと考えられますが、それでもこうしてメディアに取り上げられることは大きなメリットになります。音楽、スポーツ、ゲームなどの分野では過去のコンテンツを生かす動きが見られますし、今後はそういったメリットを狙って動くテレビ局も出てくるかもしれません」(木村氏)

 先日、在京キー局は第2四半期の決算を発表したが、各局前年比を大きく下回るものだった。これまで数多くの人の時間を獲得してきたテレビだが、インターネットの出現により苦戦を強いられている。“往年の人気番組の復活”は、テレビ局の“上方修正”の狼煙になるか、それとも……。