琵琶湖の東部、特産品の山いもなどで知られるのどかな滋賀県愛荘(あいしょう)町で残虐な事件は起きた。田園地帯にポツンと立つ築28年のアパート。

遺体の数十か所に残されていた“リンチ”の傷

 ひとりの青年の命を奪った1階の部屋の周囲は、外壁に沿って空のペットボトルや壊れたスクーター、浮輪、男性用パンツ、ブランド品の空きパッケージなどあらゆるジャンルのゴミが散乱していた。

「ご覧のとおりのゴミ屋敷です。注意されてもまたすぐに窓からゴミを放り投げるからひどい。ヤバい家だと思って敬遠していました」

 と同じアパートの男性住人。

 近くに住む別の男性は、

「部屋の中に衰弱した男性がいるなんて想像もしていなかった。逃げ出すか、助けを求めてくれればよかったのに……」

 と顔を歪める。

 同居していた無職・岡田達也さん(当時25)に十分な食事を与えず、金属製の棒や素手で暴行を加え殺害したとして滋賀県警がさきごろ逮捕したのは無職・小林久美子容疑者(55)と息子でアルバイト作業員の少年A(19)。

 身長174センチの岡田さんは厳しい食事制限で標準体重の約半分の30キロ台までやせ細り、頭などに繰り返し暴行を受けて昨年10月26日に死亡。遺体の数十か所に残されていた傷が“リンチ”の壮絶さを物語っていた。

「亡くなる1年前に久美子容疑者らと生活し始めた岡田さんは解体作業などのアルバイトで得た収入をすべて『生活費』として取り上げられるようになった。必要に応じてお小遣いをもらっていたようだが、アルバイトを辞め収入がなくなると食事制限されるようになった」

 と地元紙の社会部記者。

 拘束されていたわけではなく、ひとりで近所に買い物にも出かけているから、逃げ出すチャンスはいくらでもあったはず。

 しかし、たび重なる暴力と食事制限で気力・体力とも奪われていった岡田さんは、亡くなる直前は逃げ出すことなどもう不可能だったのだろう。