彼らの意思関係なしに
“特別扱い”

 法改正に世間が熱い注目を注ぐ中、粛々とした態度を示していたBTSのメンバーだが、兵役の話題に関して芸能人は特段に慎重にならざるを得ない事情がある。

 韓国ではこれまで精神・身体疾患を偽装するなどし、兵役逃れをしようとした芸能人が複数人いて、明るみになるたび激しいバッシングを浴びてきた過去がある。

 有名なのが'04年に起こった人気俳優ソン・スンホン、チャン・ヒョクの事件。兵役免除をあっせんするブローカーから薬物を入手し、腎臓の疾患を偽装。プロ野球選手なども含まれていたことから、大きな物議をかもした。

 また、'96年に始まり一時は芸能人のお決まりコースだった「芸能兵制度」も、今や黒歴史。芸能兵は、国防省のPR活動などに従事するのが主な任務だが、通常の兵士より休暇を多く取得していたなど優遇措置的な事例が続き批判を集めていた。そんな中、'12~'13年に芸能兵による不祥事が相次いで発生し、'13年7月に撤廃された。服務中に風俗店に出入りし、撤廃のきっかけを作った歌手SE7EN(セブン)らは7年たった今もイメージ回復に苦労している。

現在も『兵役で芸能人は特別待遇を受けている』という国民感情が強く残り、有名になればなるほどバッシングの標的になりやすい。最近ではEXO(エクソ)のD.O.(ディオ)のように年齢制限を待たずして早めに入隊したり、SHINee(シャイニー)のミンホのように訓練が過酷な海兵隊に進んで入隊するアイドルも少なくない。それだけに、BTSだけ過剰な特別扱いをされているイメージが付くのは大きなマイナス要素に」(前出のライター)

 韓国の文化体育観光省が今年9月に発表した試算によると、ビルボード1位を記録したBTSのシングル『Dynamite』の経済効果は何と約1兆7000億ウォン(約1635億円)。また、所属事務所BigHitエンターテインメントの'20年上半期の売上高は、88%がBTSの関連事業によるもの。10月に韓国の株式市場に上場したばかりの事務所にとって、彼らは大事な虎の子だ。

「今の商機を逃すまいと国と事務所に搾り取られるだけ搾られて、30歳になったとたんポイっとされてしまう感じがして怖い。そもそも、1年半程度の空白でアーミーはBTSから離れません。

 JINと一番年下のJUNG KOOK(ジョングク)は5歳差があり難しいとは思いますが、できるだけメンバー7人が時期を合わせて入隊し、誰かが欠けている期間をなるべく短くしてもらいたいというのが一番の望み」(前出のファン)

 『BE』の記者懇談会の場で、BTSの兵役が大きなイシューになることについてリーダーのRM(アールエム)は「プレッシャーを常に感じているが、多くの愛を受けているから起こることだと考えている。運命として受け入れようとしている」とコメント。少しでもメンバーたちの望む形での入隊となることを望むばかりだ。

取材・文/新森実夏