挑戦を続けてきた朝ドラ
これに近いのが『わかば』だと田幸さんは続ける。
「ヒロインの原田夏希さんが“生きてるだけで丸儲け”と、さんまさんみたいなことを言うんですけど(笑)、造園会社に就職したらすぐにちやほやされ、ケンカを売った取引先業者の男性といい感じになって結婚して……。若葉を愛せないという視聴者の声が多かったと聞いています」
また、朝ドラでヒロイン同様、話題になるのがドラマのロケ地について。
「これも『天花』なんですけど、ご当地要素が薄っぺら。舞台になったのは仙台ですけど、牛タンを食べて“固い”と言ったり、冬に夏の風物詩・ずんだ餅を食べていたりと季節感がまるでありませんでした」
これには仙台の人たちからも不満の声があがったという。ほかにも多部未華子がヒロインの『つばさ』は日本全国でご当地になった最後の県、埼玉の川越を舞台にしていた。しかし、
「川越らしさはまるでありませんでした。この作品で話題になったのは、リオのカーニバルのようなサンバダンサーが唐突に現れて踊るシーン(笑)。インパクトはありましたけど、ご当地からしてみれば“?”ですよね」
また、テーマをたくさん盛り込みすぎるのも問題で、その“食べ合わせ”の悪さが目立つという。
「『瞳』ではヒップホップのダンサーを目指す榮倉奈々さん演じるヒロインと、里親養育をしている祖父と里子との関係をテーマにしました。普通に考えて、相性がいいと思いませんよね(笑)。狙いを完全に一本に絞れない、制作サイドの自信のなさみたいなものが見える気がします」
振り返ってみると、当時にしては“尖ったこと”をやろうとさまざまな挑戦をしていたように見える。
「前述した朝ドラの低迷期は、民放のドラマが刺激的で、NHKはトラディショナルすぎておもしろくない、と思う視聴者が増えてたんでしょう」
そういう人たちも取り込まなければ、とNHKの制作サイドも、若い視聴者に合わせようと作り手も若返り、選ぶ俳優さんも民放で人気の人を選ぶ流れになったという。
「でもそういったチャレンジがあって、’10年代の『あまちゃん』など視聴率の回復につながっていると思います。今から思えば、’00年代朝ドラは出てくるのが早かったのかなと(笑)」(木俣さん)
始まったばかりの『おちょやん』はこの先、どんな評価を受けるのだろうか?
「数字がよくても悪くても、話題になってしまうのが朝ドラ。ですから『おちょやん』には頑張ってほしいですね。
コロナ禍で変わってしまった日程の影響で、放送期間も短くなる可能性もありますし、いろいろ予定どおりにいかないといった事情もあると思いますが、こんな時代なので明るく楽しい作品であってほしい。とにかく、応援しています!」(田幸さん)