「失敗しない力」よりも「やり直せる力」
できれば失敗しないで生きていきたいし、間違いは犯さないに越したことはありませんが、そうはいかないのが人生というもの。だからこそ、「失敗しない力」よりも「やり直せる力」のほうが求められるのではないでしょうか。家族でも友達でも恋人でも同僚でもいい。周囲からどんなにヤバいと言われても「この人は自分の味方だ」と思える人が1人でもいることが、やり直す原動力になるのではないかと思うのです。
私は婚活相談を行っている関係で、若い女性読者とメール交換をすることがあるのですが、「自分は嫌われている」と思う人が多いことに驚きます。実際に「あなたのことが嫌い」と言われたのならまだしも、根拠もないのに「嫌われている」というのは思い込み以外の何物でもなく、「好かれたい」という気持ちが強すぎて、他人の何気ない言葉に傷ついてしまうのだと思うのです。しかし、芸能人のような人気商売でなければ、そこにこだわる必要はありませんし、「好き」とか「嫌い」という感情は、そもそも証明しにくい、あやふやなものではないでしょうか。
直木賞作家・林真理子センセイの『本を読む女』(集英社文庫)をご存じでしょうか。本作は真理子センセイのお母さまを書いたものですが、真理子センセイのご実家は裕福な菓子商で、おばあさまは大変教育熱心だったそうです。オンナに学問はいらないと言われた時代でも娘たちを東京の学校に通わせますが、おじいさまが突然亡くなってしまいます。それでも、子どもを上の学校に通わせることについて、周囲に「世間に笑われてもいいのか」「親類に面目が立たん」と言われますが、おばあさまは「他人は何もしちゃくれません」「誰もご飯を食べさしちゃくれんだから、何を言われたっていいでごいすよ」と毅然として言い返すのです。
SNSの出現で、現代は他人のことをあれこれ言ったり言われたりする機会が格段に増えました。中には意見の範疇を超えて、誹謗中傷に思えるものもあり、傷つく人も多いのではないでしょうか。こんなヤバい時代を生き抜くためには、「ご飯を食べさせてくれる人」だけを大事にする合理性が大事なのかもしれません。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」