心理テストの結果、PTSDだと判明

「だって……喧嘩はしていなくても、お父さんとお母さん、もう顔も合わせないようにしてる。食事も別々だし、険悪な感じで家の空気が悪すぎる。二人とも私の気持ちなんて考えてくれないし。

 家の中にいてもひとりぼっちだなって感じる。だから誰かに一緒にいてほしくなる。それに最近は涙が止まらなくなったり、この家にずっといるくらいなら死にたいなって思う」

 そこまで春香ちゃんは精神的に追い詰められている、ということです。

 雄一さんと伸子さんには、春香ちゃんは心理テストの結果、PTSD(心的ストレス後外傷障害)であることを伝え、夫婦の問題点とこれから取るべき行動についてアドバイスしました。

 春香ちゃんの心をケアするためには、夫婦仲の改善が必要であることと、二人ともそれぞれ春香ちゃんに謝ることが必要なこと──雄一さんは父親としてひどいことをし、傷つけたこと。伸子さんは母親として話してはいけないことを話し、春香ちゃんを苦しめたこと。そしてこれから家族仲よくやり直していく努力をすること。春香ちゃんには心のケアをしながら、両親が変わったと感じられているかを確認するため、しばらくカウンセリングに通ってもらいました。

 両親が謝ってくれたことで彼女はかなり落ち着き、雄一さんと伸子さんは春香ちゃんのために、夫婦仲よくするよう努力をするようになりました。

ケース2:母の不倫に気づいた受験生の息子

<相談者の家族構成>
夫:徹(仮名・45歳・会社員)
妻:由美子(仮名・46歳・専業主婦)
息子:明彦(仮名・15歳・中学3年生)

 中学3年生の息子が全く勉強せずに、ゲームばかりしている、という悩みで夫婦が相談に来ました。

「息子はまじめで、受験もあるのでちゃんと勉強する子だったのに、急に勉強しなくなってゲームばかりするようになったんです。塾に行かない日も増えたし、学校に行きたがらない日も増えました。注意しても聞かないので困っています。もちろん成績もすごく落ちました。このままじゃ志望校なんて絶対に入れません」

 話をするのは徹さんが主でした。その横で由美子さんが妙に怯えた様子なのが気になりました。徹さんも由美子さんのほうを見ようともしないのです。

父の怒鳴り声で母の不倫を知る

「何か、思い当たることはありますか?」

 私がそう尋ねると、徹さんが答えました。

「妻の不倫でしょうね。若い男と不倫してたんです。私が仕事をしている間に、若い男の部屋にずっと通っていたんです」

「そのことは、息子さんはご存じですか?」

 と私が尋ねると、徹さんは、

「もちろん、気づいているでしょうね」

 と答えました。

 明彦くんにカウンセリングに来てもらい、話を聞きました。

「勉強しなくなったって、お父さん、お母さん心配しているけど?」

 と私が言うと、明彦くんは呆れたように笑いました。

「お前たちのせいだって言いたいけど」

 明彦くんが由美子さんの不倫を知ったのは両親の言い争いでした。

「家の中にいるんだから聞こえますよね。毎晩、親父が怒鳴ってるんですよ。それでお袋が若い男と不倫してたって知りました」