Yは美紀さんの死まで利用。「患者が亡くなり、つらい」と涙ながらに訴え、女性の気を引こうとしていたのだ。
何十人もの人生が狂い、命を奪われ、家族が壊れた。
関係者によるとYは県内のクリニックを閉じ、妻子と別れ関西に移り住んだ。そこでも同様の手口で加害を繰り返していたという。
悪質な医師が野放しにされている
だが、現状では処罰する手段はない。服薬や性行為に『合意』があるとみなされれば、罪には問えないからだ。
「私たちは精神科医が地位や関係性を利用していることを問題視しています」
前出の米田さんは訴える。治療中の主治医と患者が恋愛関係になることは本来、医師の倫理的にありえないことだという。特に精神科や心療内科など、弱ったときに心のうちを打ち明ける分野は危うい。
患者が医師に恋愛感情のような気持ちを抱くことがあるからだ。これを『陽性転移』といい、誰でも起こりうる。精神科医はその前提で患者に接しないといけない。
もうひとつの問題はそれにつけ込む一部の悪質な医師が野放しにされていること。
「治療を装った体(てい)のいい性の搾取、Yのようなケースはかなりあると見られます。しかし、日本の行政はよほどの健康被害がない限り、医療行為の内容に口出しできる権限がない。逸脱するような診察をしていても行政や法律では取り締まれない」(米田さん)
本来、悪質な医師たちも医師法では処分することができるはずだ。
「医師法の第7条では、罰金以上の刑が確定した場合だけでなく医師としての品位を損なう行為をしたときには医師免許の取り消しなどの行政処分の対象となることが示されています」(同)
■医師法第7条
医師が第4条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 3年以内の医業の停止
三 免許の取消し
患者への不適切な行為が品位を損なう行為でなければ何が品位を損なう行為なのか。