【Part3】依存症患者の家族が告白
反抗期がない“いい子”だった息子さんが、ひきこもりとなり、大学を中退し、ギャンブル依存症に。父親である倉橋泰さんは、最初は借金の肩代わりをしたり、経営する会社に入社させたりしたが、依存症は治らなかった。
「弟になりすましてサラ金で借金したり、母親のカードでキャッシングするなど、ギャンブルに使うお金を引き出すためにあらゆることをやってしまうのが依存症です。最初は息子を犯罪者にしないため、家族でフォローしていましたが、田中紀子さん(※Part1で登場)に出会って、『病気なのだから回復施設に入れないと治らない』と言われ、息子は3年ほど施設に入っていました」
息子さんはその後、得意分野を生かした仕事に就くことができ、現在はイキイキと働いているという。
「仕事で認められ、自己肯定感が得られることで、ギャンブルに頼らなくても気持ちが安定しているのだと思います」
倉橋さんはギャンブル依存症の家族会で活動するうちに、自身にも問題があることに気づいた。
「私は息子が小さいときは単身赴任で子育てに参加しておらず、息子が依存症になって初めて子どもと向き合うようになりました。しかし、今度は子離れできずに、借金を肩代わりするなど面倒を見てしまい、子どもが自立できず、“共依存”の関係になっていると指摘されました。
子どもが依存症の場合、親自身にも問題があることが多いので、ぜひ家族会に参加していただきたいと思います」
子どもが依存症になった場合、「家族の力でなんとかしよう」と思わないことも大切だ。
「依存症は病気なので、自助グループに参加するか、回復施設で専門的なプログラムを受けることをおすすめします。しかもプログラムを受けたらすぐに治るというものではなく、何度も再発するなど時間がかかるものです。
依存症を治すには同じ病気である人とのつながりが大切なので、家族は距離をとりながら見守るしかありません。お子さんが依存症だと気づいたら、回復施設に入れることも選択肢として専門機関に相談してみてください」
倉橋泰 ◎情報誌『ぱど』の創業者として、株式会社ぱどの代表取締役社長、会長を歴任。息子のギャンブル依存症をきっかけに「NPO法人 全国ギャンブル依存症家族の会」で活動。
(取材・文/紀和静)