田中要次の「あるよ」ができるまで
小日向同様、『HERO』シーズン1で初めてこの俳優のことを知った人も多いだろう。どんなオーダーをされても“あるよ”とクールに応じるバーのマスター役を演じた田中要次(57)だ。
「最初、視聴者も“あの強面のオジサンは誰?”という感じでしたが、最終的には本作を語るうえで欠かせない名物シーンを生みました」
最初は“あるよ”ではなく、“ビール”というセリフだったという。
「田中さんはこのセリフから“マスターは無口でぶっきらぼうなキャラなんだ”と理解したそう。それで、木村さんとの掛け合いを重ねるうちに、3、4話あたりから“あるよ!”に固定されたそうです」
ひと言しか話さないという変わり者マスターでブレイクした田中だが、素顔もかなり独特だ。彼は27歳のとき、国鉄職員を辞めて俳優の道を志したのだが、退社する日に妙なこだわりがあった。
「田中さんは、カッコつけるために“ジョン・レノンが死んだ日の12月8日に会社を辞めてやる!”ってシャレで言っちゃったようです。別にジョン・レノンをそんなに好きじゃないのに、本当に辞めてしまうことになり……」
田中の奇天烈ぶりは、出演する『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』(テレビ東京)でも垣間見える。
「作家の羽田圭介さんとバスを乗り継いでいく旅番組なのですが、時刻表を確認する羽田さんの隣で田中さんは“とりあえずご飯を食べよう”。その超マイペースさに視聴者の反感を買ったことも……」(テレビ局関係者)
“あるよ”のひと言で全国的な知名度を得た田中は、わが道を行く──。