親がしつこくつきまとってくる場合

 しかし、法的な親子関係が解消されなければ、親のせいで子どもが被害をこうむる可能性は残るでしょう。たとえば、もし親が子どもにしつこくつきまとってくるような場合には、どうしたらいいのでしょうか。

親につきまとわれ、実際に生活の平穏が害されているような場合は、接近禁止仮処分の申立を検討するべきでしょう。この手続きをとるには、仮処分命令の発出を裁判所に求める必要があります。

 仮処分命令が出ても、つきまといが止まらない場合は、強制執行(間接強制)を行うことができます。間接強制というのは、命令に従わない場合に一日当たりいくらという金額を支払うことを強制させる手続きで、命令違反に対する抑止力が期待できます」(宮本弁護士)

 それでは、親が亡くなって借金の相続を求められた場合は、どうなるのでしょうか。

「親が他界した場合、子どもは原則として親の財産を相続することとなります。相続をする場合、プラスの資産のみならず、マイナスの借金も引き継がれますので、親の借金が資産を上回る場合は、相続放棄の手続きを取るべきでしょう。相続放棄をする場合、『自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内』に、家庭裁判所にその旨を申し出る必要があります」(宮本弁護士)

 ではさらに、親が生活保護を申請した場合はどうでしょうか。現状多くの場合、生活保護の申請が行われると行政は親族に扶養照会を行い、扶助を求めます。子どもが、これを断ることはできるのでしょうか。

親子には生活扶助義務というものがあります。これは、お互いに生活に困ったなら助けなければいけないという義務です。そのため、たとえば親が生活保護を受給するというとき、子がこれを支えられないか、つまり生活扶助義務を果たせないかについて、役所から照会が入ることがあります。

 もっとも生活扶助義務は、自身の生活状況等を考慮したうえで、余力のある範囲で、生活に困窮する親族を扶養する義務であると考えられております。ですので、自分の生活水準を下げてまで扶助する義務はありません。役所からの生活保護の扶養者照会が来たとしても、自身の生活に余力がなければ、断っても差支えはないでしょう

 なお、このように子どもが親の扶助を断ることは可能なわけですが、逆に子ども側が生活保護の申請を行った場合も親に連絡が行ってしまう点は、注意が必要です。