泊まりがけの対局も
「​特別扱いはできない」事情

 タイトル奪取後も対局が途切れず、高校に行く時間がさらに無くなってしまった。

「藤井さんは対局の前後は現地に宿泊することが多い。王位戦では福岡や札幌などで対局があり、基本的に日帰りはできません。タイトル戦の当日は欠席扱いにならないと学校は話していましたが、その前後までは認められなかったようです」(同・スポーツ紙記者)

 一般的な高校では、1年間の3分の1以上欠席すると、進級や卒業が危ぶまれると言われているだけに、今回は出席日数をクリアできなかった可能性が高い。

「うちの高校は、進級や卒業が危ない人は、夏休みが終わったころに担任に呼び出されるケースが多いですね。そこで留年の可能性を伝えてまず登校を促して、補習などの提案をされるんです」(名大付属高校の卒業生)

 将棋連盟を通して彼が出したコメントによると、学校との話し合いを始めたのは昨年秋ごろから。名大付属高校が進級や卒業が危ない生徒と面談をする時期とも一致する。

「私立の学校であれば“課外活動の実績”を理由に、多少の融通はきいたかもしれません。でも、国立の学校は藤井さんだからといって特別扱いすることはできない。規定通りに判断せざるを得ませんからね。学校側はなんとか卒業させたかったでしょうが、留年もやむなしという結論になったんだと思います。彼としてももう1回、高校3年生をやり直すのではなく、退学して将棋に邁進する道を選んだのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)

 藤井の退学理由について、学校側に改めて問い合わせたが、

「発表した以上のことは、個人情報になりますのでお答えできません」

 とのことだった。“1日中将棋のことを考えていたい”という藤井にとって、自主退学という選択は、合理的な判断だったのかもしれない。師匠の杉本昌隆八段も、メディアの取材に対してこのようにエールを送る。

「もったいない気持ちもしましたけど、卒業という形にとらわれないのが藤井二冠らしい。将棋に専念して、さらに飛躍してほしいです」

 地元の瀬戸市でも、藤井の決断を支持する声が聞かれた。

「もう進路は決まっているのだから、無理して高校に通うことはないと思いますよ」(40代/男性)

「よく今まで両立させてきたと思います。これからは将棋のことだけを考えて、どんどん勝ってもらって、8つのタイトルを全部取ってほしいですね」(50代/女性)

 将棋に専念できる環境を手に入れた藤井がどこまで強くなるのか、今から楽しみだ。