ケース1:冗談で「不倫してるの?」業務に支障も

 個人の資質と社会の構造が複雑に絡み合う女性上司によるハラスメント。

 週刊女性には女性上司からのハラスメント経験のある当事者の声も多数寄せられた。

「言ったほうは冗談だったかもしれませんが、今もモヤモヤは消えません……」

 IT企業に勤める片岡菜摘さん(29歳、仮名)がまだ入社2年目のこと。

「新規事業プロジェクトに40代既婚の男性と2人で抜擢されたんです。その先輩とは、打ち合わせを兼ねてランチに行ったり、行動をともにすることが増えました」

 そんな菜摘さんの様子を見た50代の女性部長がある日、こんな言葉を投げかけた。

「廊下ですれ違った際、“あなたたち仲よくて楽しそうね〜不倫してるの? ほかの部署でも噂よ!”と楽しげに言ってきたんです。さらにその男性について“あの人、まじめそうだけど風俗店の常連なのよ”とも言われました」

 もちろん不倫は事実無根だ。

「それからは“不倫なんて絶対にありえない”と周囲にアピールをするために、先輩には必要以上にツンケンして、距離を置くようになってしまったんです。風俗の話も妙に生々しくて、私も同僚に“あの人、キモいよね”と言ってしまったことも……」

 当然、その男性にとって菜摘さんの行動の変化は不可解で戸惑うばかり。

「たとえ軽口でもデリカシーはほしかったし、先輩にもいつか謝りたいですね」

 職場での無自覚な“からかい”もれっきとしたハラスメントになりうるのだ。

ケース2:厳しすぎる指導と価値観の押しつけ

 コロナ禍で一気に加速したテレワーク。

「嫌な上司とも直接、顔を合わせないため、ハラスメントとも無縁と思ったのですが」

 アパレル会社の営業職の田村雅史さん(30代、仮名)はうつむきながら語る。

 女性上司からのハラスメント被害に遭うのは同性部下だけではない。

「女部長から週末や深夜にも“進捗はどう? 期待をしているから頑張って”“こないだ紹介をした○○さん、メールしてる? 契約が取れなくても、連絡は頻繁にして”と鬼のようにメールが来て、気が休まりません」

 また、女部長は過去に雅史さんの同僚女性にはこんな言葉を投げていたという。

「部長はみんなの前で、生理痛がひどくて遅刻をした彼女に、“みんな、生理でしんどくても仕事してる!”“自己管理がなってない! 私たちが若いころはガマンして外回りもしていたのよ”って怒鳴っていました。もちろん周囲には僕も男性社員も大勢いて……」

 その上司の口癖は「私が厳しく接するのは、愛のムチ」だとか。

「そんな“愛のムチ”はいらないし、まさに“うっせぇわ”ですよ。最近はヤル気も落ち、いかにテレワーク中にサボるかばかり考えてますね(苦笑)」