岸部シローさんを知らなかった

 しばらく前まで日本テレビの番組スタッフだったという男性は、

「番組作りの体制を見ると、こういうことが起こりうる事態だと思いますよ」

 とあきれつつ、こう続ける。

「『スッキリ!』の制作ルームは日テレの6階にありますが、そこに入ると一目瞭然で、スタッフは20代、30代がほとんどです。彼らを統括するプロデューサー、部長が40代。

 昨年の夏、タレントの岸部シローさんが亡くなったときも、若い人は岸部さんのことを誰も知りませんでしたからね。その程度の知識のスタッフがV(動画)をつないで公共の電波にのせるわけですが、そりゃ怖いですよね

 さらに声を強める。

「若い人だけで番組は作れる、という驕りがテレビ局にはあるんです。新聞や雑誌などでは、ベテランの記者もいて、若手もいて、とバランスが保たれている。テレビ局は若い人を使ったほうが人件費が安く済むと考える。報道より先にそろばん勘定。

 要するに“コスパジャーナリズム”なんですよ。ベテランのスタッフがいて、事前にチェックできれば、今回のアイヌの人に関する差別発言、差別ネタは防げたと思いますよ」

 お笑い芸人の発言に端を発したとはいえ、日テレは「担当者の無知」「事前チェックの手落ち」を言い訳にした。

 制作体制の構造的問題として今回の差別発言をとらえ、老若男女のスタッフによる取材体制&チェック体制を取らない限り、いつまた、同じ差別発言をしてしまっても不思議ではない。

〈取材・文/薮入うらら〉