ウンチしちゃった若い男の子がいた
両岸の桜並木が見事な目黒川。目黒区によると、昨春は感染拡大防止のため区主催のイベントを中止したほか花見の自粛を呼びかけた。しかし、花見期間の約2週間で最寄りの東急電鉄中目黒駅の乗降客数はおおよそ前年比半減ながら約155万人を記録。ガマンできない花見客が少なくなかったとみられる。
川沿いで暮らす40代女性は「歌っているのか叫んでいるのかわかりませんが、夜は自宅にいても騒ぐ声が聞こえてきます。もう慣れっこですね」と諦めムード。飲み残しの缶ビールや食べ残しのつまみなどをそのまま捨てていくのも当たり前という。
50代男性は言う。
「例年だと年末のアメ横のようにごった返し、翌朝はゴミだらけ。昨春はコロナ自粛でそこまでではなかったが、マナーは守っていただきたい」
マナーの悪さは騒音やゴミの不法投棄にとどまらない。
60代女性は眉をひそめて話す。
「昨年ではないが、そのへんでウンチしちゃった若い男の子がいた。ウンチのついたパンツまで捨てていって。ほかに人混みから離れた路地で立ち小便する人もいるし、ひどいのは人の家の塀にしちゃう。道端にはお好み焼きみたいになった嘔吐跡があって、避けて歩いても酸っぱい臭いが漂ってくる。掃除する人の気持ちを考えてほしい」
川沿いでは座り込んで飲食ができないようロープが張られるなど防止策が取られていたが、酒の勢いを借りて見知らぬ若い女性にまとわりつく輩(やから)はいるという。
80代女性は「花見でお酒を飲みたくなる気持ちはわかる」と前置きしてこう話す。
「でも飲みすぎちゃダメですよね。自分の行動に責任を取れなくなるから。違法営業する屋台もあるようだし、そうした無責任さを見逃すと花見客のマナーも悪くなるような気がするの。花見に来るなとまでは言いませんが、コロナ禍なんだからもう1年ガマンしてもいいんじゃないか」
花見スポットの周辺では「毎年花見はしない」と話す住民が少なくなかった。乱痴気騒ぎを見たくないからだという。責任ある行動が求められる春がやってきた。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する