例えば、闇営業騒動の前月、後輩の山里亮太が結婚。『スッキリ』はゲストに呼んで盛り上げた。その際、加藤は芸人や社員が女優や女子アナと結婚することの効果として、興奮ぎみにまくしたてたものだ。

「今年のNSC(吉本の養成所)の生徒、増えるぜ。フジテレビのウッチー(内田恭子アナ)と結婚した社員いたじゃん。あんとき、吉本の入社希望者、むちゃくちゃ上がったんだから」

加藤と吉本のズレ

 ここには彼なりの「吉本」への愛が見てとれる。高校までサッカーに熱中した体育会系だからか、帰属意識が強く、気持ちが組織に一体化してしまっているところがあるのだ。

 だから、闇営業騒動でも大騒ぎした。彼の中にある理想の会社像というものからズレていたことが許せなかったのだろう。しかも、本人は組織によかれと思ってやっていたりする。また、自分=組織なので、悪口を含めて何を言ってもいいし、大目に見てもらえると考えがちだ。

 しかし、当然ながら、組織と個人は別モノだ。エージェント契約に切り替わった際、そこに気づくべきだった。

 が、彼の心は吉本芸人のまま。だからこそ、契約を打ち切られたことに、

僕は続けたかったけど、会社から延長しないと言われたらノーと言うわけにもいかない。お互い納得のうえで契約がなくなるってことになっちゃったというか。ちょっと僕もびっくりしてるというか

 と言うしかなかったわけだ。要は、彼が吉本を愛していたほど、吉本は彼を愛していなかったのである。

 最後に意味シンな話をもうひとつ。『極楽とんぼ』を辞書でひくと、こうある。

ことの重大さにまったく気づかず、のんきに構えている者のこと

 思えば、相方の山本圭壱が少女との淫行事件を起こしたときも軽率さがアダになった。名は体を表す、という意味で、これほど“スッキリ”とわかりやすいコンビはいない。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。