採用活動で喫煙者を除外しようとする動きについては問題ないのだろうか。
「実は日本では、解雇が難しいぶん、採用の自由がある程度認められています。性別など生まれ持ったもので差別することは違法ですが、喫煙や飲酒の習慣を理由に人材を選択することは適法だと一般的に言われています」
ただし、いったん採用した従業員に関しては、話が変わってくる。
「入社後に、喫煙習慣を理由に減給や降格、解雇など不利益な扱いをするのは違法になるでしょうね」
嗜好品を「快・不快」で断罪する危うさ
禁煙・分煙が国際的な流れとはいえ、嗜好品をやみくもに制約することのないよう注意が必要なのではないか、そう中村さんは考えている。
「もちろん、他人の健康を害さないよう、分煙は徹底すべきだと思います。でも、たばこを吸うこと自体を制約されるのはおかしいのでは? 本人の自己管理、自己責任ということでいいと思うんですよ。国に私の健康を心配され、たばこをやめろとか言われる筋合いはないですね」
喫煙者への過剰な締め付けが、趣味嗜好を規制する動きにつながらないかとも中村さんは危惧している。
「快・不快の問題で物事を規制しよう、法律で社会を漂白しようみたいな流れができていくと、他のこと、例えばお酒などの嗜好品や表現などにもそれが波及していく可能性がある。不快なものは一切、社会から消しましょうという動きが強まると、絶対ひずみが生まれると思う。何か全体主義的なものを感じちゃいますね」
企業についてもその危うさは同様にあるという。
「自宅でも吸うなとか、そんなことを言われる筋合いはないはず。そこまでの干渉は行き過ぎだと思うし、社員のプライベートに干渉する前例を作ってしまったらダメだと思うんです。他のことも干渉するようになるかもしれないじゃないですか」
三浦弁護士も、「喫煙については、受動喫煙による健康被害が考えられるので、規制が強まる流れは避けられません。ただ、明確な根拠なくプライベートな時間・空間まで禁煙を求めるようになったり、飲酒など他の嗜好品まで制約するような動きが出てくるようになったりしてくるとちょっと怖いですね」と懸念を示す。
今後、喫煙がどこまで規制されていくのか、その行く末を注意深く見守っていきたい。