パートを減らされ、クビを切られては職探し。生活困窮者に食料支援を行う「フードバンク」には、綱渡りの暮らしを送るシングルマザーが殺到している。長引くコロナ禍であぶり出された過酷な実態に迫る!
コロナ禍で離婚、何度も“職探し”
昼下がりの閑静な住宅街に、自転車やベビーカーを押して歩くママたちが続々とやって来た。目的地のビルに到着した順番に、色とりどりの野菜やパン、牛乳、お菓子などの食材が入ったケースを受け取ると、袋やスーツケースに詰め込み、それぞれの家へと帰っていく。
春の陽気に包まれた2月下旬、東京都足立区で開かれた、生活困窮者へ無償の食料支援を行う「フードバンク」の模様だ。主催するのは、子育て中の母親たちを支援するNPO法人『子育てパレット』。フードバンクは毎月1回開かれ、参加者は足立区に在住のシングルマザーが対象である。
食材を受け取ったひとりの女性に話しかけてみると、「コロナの感染が拡大する直前に離婚しました」と事情を打ち明けてくれた。
この女性(40代)は現在、足立区にある実家で、高校生の長女ら子ども3人と暮らしている。
離婚後は、都心のイタリア料理店でパート従業員として働いた。ランチを中心に1日6時間、ホールに立って時給1300円をもらっていたが、コロナ禍で予約が入らなくなり、勤務日数を減らされた。やがて長期休暇を言い渡され、店は間もなく閉店。しばらくは貯蓄でしのぎ、1か月後に輸入食品の販売店でパートの仕事を得た。
「勤務時間が長いので、帰宅は夜の8時。そこからごはんを作ったり宿題を見たりして、お風呂に入れると、小学生の子ども2人は寝るのが11時になってしまうんです」
しかし、その販売店も閉店が決まり、コロナ禍で2度目の職探しに追われていた。
「子どものことを考えると、休憩なしで6時間、毎日働ける職場を探しているのですが、そうした条件の求人がなかなか見つかりません。離婚するまで専業主婦を16年やってきたので、できる仕事も限られています」
食べ盛りの高校生と中学生の息子3人を育てている別の女性は、パート先の居酒屋が時短営業になり、月々の収入が2万〜3万円減ったと嘆く。
「減収分はフードバンクや親に頼るなどして何とか埋め合わせしています。かけ持ちで働く弁当店も経営不振なので、仕事をさらに増やそうかと考えています」
女性は、話が子どものことに及ぶと急に小声になり、目に涙を浮かべた。
「コロナで子どもが変わっちゃったんです。特に高校受験を控えている次男が。学校が休校したため、ふさぎ込むようになりました。おまけに進学先の特待推薦枠をはずされてしまい……。だから私も今は、あまり人に会いたくないです」
そう言い残し、女性は足早に帰っていった。