もっとも、彼女のような元アイドルにはこういう人が多く、歌や芝居をメインにして食っている人のほうが少ない。また、インターネットが発達する前から彼女はとかくプライベートが話題になるタイプだった。
“夢を売る仕事”から“現実の切り売り”へ
後藤次利との不倫騒動に激やせ、一時的な引退。結婚は3度、離婚は2度経験した。そのなかで子宝に恵まれ、現在の夫の連れ子2人も含めると計7人の母親に。その一方で、がんの前にもリウマチなどを患い、そんな生活すべてがが「売り」にもなっているという声もある。
ちなみに、彼女は新人時代、初めて出演した『ザ・ベストテン』(TBS系)でアイドルについて「夢を売る仕事」だと語った。それが今では生活という「現実」しか売るものがないともいえる。
いや、彼女の発信には勇気づけられる人もいて、そういう層にとっては彼女のブログも「夢」なのだろう。そこに彼女の正義もあるわけだ。
しかし、そうじゃない層にしてみれば、芸能人なら芸を見せろ、という気持ちだろうし、それもまた、正義だったりする。
引っ越しについてのブログのなかで、彼女は、
《人生って何が起きるか分かりません。誰のせいでもなく、誰が悪いわけでもなく。全ては運命と必然》
と書いたが、まさにそのとおり。人間の好き嫌いというのもまた、そういうものだ。
ただ、40年前の夏、ホリプロタレントスカウトキャラバンでの可憐な姿を覚えている者にとっては、ちょっとせつなかったりもする。カメをいじめないでという、浦島太郎の気分なのである。
宝泉薫(ほうせん・かおる) アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)