'18年には『北の国から』続編の可能性が取り沙汰されたが、実現していない。田中さんは老人ホームから自宅に戻ったものの、周辺住民からは“認知症が進んでいる”との証言もあった。
'20年3月に、週刊女性は田中さんの自宅を訪れたが会うことはできず。近所の女性から話を聞いていた。
「1年半くらい前に、車椅子に乗った田中さんと奥さんを見たのが最後ですかね。最近はまったくお見かけしませんよ。自宅も長らく不在というわけではないと思いますが、カーテンやシャッターは閉まっていることが多いです」
デイサービスの車も見かけられなくなり、施設に入ったままなのではないかと近所で噂されていたという。
今回の悲報を受け、近所に住む男性から追悼の言葉があった。
「びっくりしました。すごくお世話になった方だったので。10年前くらいですが、僕が中学生のころは登下校の見守りをしてくれていましたよ。すごく優しい方で生徒みんなに声をかけていました。僕らが近所のバッティングセンターで遊んでいると、地域の見回りの一環で覗きに来てくれたりしてね。野球が好きなのか、僕たちに指導してくれたこともありましたよ」
スクリーンで見せた、はにかんだような笑顔は、田中さん本来の表情だったのだ。穏やかでシャイな性格だったが、駆け出しのころのちょっと意外な“伝説”もある。
「あぁ見えて、邦衛さんは女性からすごいモテたんだよ。おもしろおかしくモノマネされてたから、そんなイメージがないかもしれないけれど、普段の彼は話し好きで面白くて。それに優しかったから、女性たちはみんな放っておかなかった。映画では加山雄三さんや高倉健さんを引き立てる役回りが多かったけど、実際の飲み屋とかでは彼ら“二枚目”よりも女性からモテてたからね」(映画関係者)
気味が悪いと思われた役づくり
田中さんのきまじめさもよく知られている。どんな役でも、いっさい手を抜かずに向き合って、その人になりきろうとした。あるドラマで鮮魚店の主人を演じたとき、役づくりに力が入りすぎて不審がられたことも。
「ロケ地になったのは、神奈川県の漁師町にある魚屋さん。ご主人が朝早くに市場から帰ってきて、いつものように開店準備を始めていると、近くの電柱の陰に薄汚れた帽子と服を着たオジサンが立っているのに気づいたそうです。そのオジサンは、昼になっても夕方になっても、ずっとそこから動かずにいて、夜に店を閉めるといなくなった。ところが、その次の日の早朝になると、また同じところに立っていたそうです。さすがに気味が悪くなって、“アナタ、ずっとここで何をしているんですか?”と思いきって声をかけた。それが田中さんだったんですよ」(商店街店主)
田中さんは役づくりのために、1日中ずっと鮮魚店の主人を観察していたのだ。“いやぁ……怖がらせちゃってすみません”と、照れ笑いをしながら謝ったという。
全身全霊で演技に立ち向かい、さまざまな人生を演じきった。俳優生活の続きを楽しむ声が、天の国から……。