大事なのは「甘さと辛さ」の使い分け
つまり、王子とニセ王子は紙一重。ワイドショーの世界で本物の王子であり続けるには、甘さと辛さを使い分け、女性視聴者にうまく寄り添っていく必要がある。その点、甘さについては問題ないだろう。例えば、目標だったという帯番組の司会を始めるにあたり、
「心境としては、ワクワクしつつドキドキしていて……。なんていうんでしょう。初恋のような、不思議な気持ちですね(笑)」
と発言。“初恋”という女性ウケしそうなフレーズが、さらりと出てくるあたりはさすがだ。
また、少女マンガのファンで、過去には『わたしのマーガレット展』スペシャルサポーターを王子様ルックで務めたことも。テディベア好きでもあり「僕はメリーソートのチーキーのファンです」とも語っている。サンドウィッチマンの漫才風に「ちょっと何言ってるかわかんない」とつっこみたいところだが、わかる人には「オジサマ可愛い!」みたいな萌えにつながるはずだ。
一方、辛さについてはどうかというと「DVなどで苦しんでいる女性たちが気になりますね」と、女性が抱える社会問題に言及。実際、3月29日の初回放送でも「ジェンダー」の平等をテーマに取り上げていた。
ただ、このテーマで「意見を戦わせること」は容易ではない。最近、あちこちで炎上が相次いでいるように、何が正解かわからず、たったひとつの失言が命取りになる危険性もあるからだ。極端なたとえだが、渡部建のケースのように、好感度が高かった人ほど、スキャンダルによる反動も大きくなる。
とりあえず、少女マンガはあくまでフィクションにすぎないし、ワイドショーという生々しい現実空間で、王子でい続けられる保証はない。“初恋”にしても、少女マンガほど実らないのが現実の世界だ。はたして、谷原の“初恋”の行方はいかに──?
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。