長引くコロナ禍により失業者は10万人を突破、ハローワークには連日、多くの人たちが相談に訪れている。
その様子を窓口から見ながら、関東地方のハローワークで相談員として働く本間洋子さん(仮名=40代)は、「明日はわが身」と思わずにはいられなかった。本間さん自身、不安定な働き方を強いられる非正規職員だからだ。
非正規職員は3年を迎えると「雇い止め」に
社会に出るタイミングが就職氷河期にぶつかった本間さんは、ブラック企業で身体をこわしたり、子育てや介護と仕事の両立に苦しんだり、働くことをめぐって悩みが尽きなかった。その体験から、自分と同じように困難を抱える人の支援をしたいと決意。産業カウンセラーやキャリアカウンセラーの資格を取得し、ハローワークの非正規職員に応募、数年前から相談業務を担っている。
ハローワークの相談業務は、単なる仕事の紹介や就職支援にとどまらない。
「雇用保険の専門知識やそれに基づく手続きも必要になりますし、働きすぎやブラックな職場でメンタルを病んだ求職者も多いので、丁寧に話を聞き出し問題を解きほぐす、カウンセリングの技能も求められます。仕事が決まったら就職先との折衝や調整も必要で、幅広いことに対応しなければならないんです」
そんな専門性の高い仕事でありながら、窓口に立つ相談員の6割以上を非正規職員が占めている。その多くが女性だ。しかも、非正規が連続で採用されるのは2回まで。3年を迎えたら、仕事の実績にかかわらず、任期は更新されず機械的に「雇い止め」になってしまう。
「それ以上働き続けたかったら、一般の求職者に交じってハローワークが出す“公募”に応募し、面接を受け直さないといけません」
上限の3年を迎えた本間さんは今年2月、公募試験を受けて選考を通過、再び相談員の職に就くことができた。しかし、気持ちはいっこうに晴れない。
「年度末の3月を迎えるたびに、多くの非正規相談員が雇い止めの不安にさらされ、おびえています。うつや不眠に陥る人も少なくありません。実際に雇い止めに遭った非正規の中には、コロナに感染したことを理由にされた人もいます。“(ハローワークの)施設を消毒しなければならなくなり、負担をかけたため”と、正規職員である上司に直接言われたそうです」
と、本間さんは憤る。