ゴミ屋敷問題の根深さ

 特に「心の問題が大きい」と新家さんは指摘する。

「仕事や職場の人間関係で強いストレスにさらされ、帰宅したら何もできなくなり、気がついたらゴミ屋敷になってしまった人も少なくない」

 ほかにも失恋や死別などの喪失感や、うつ病など精神的な病を患ったことで掃除ができなくなった、と依頼してくる人もいるという。

 依頼者たちの男女比は半々。30代がいちばん多い。

「社会的にも信用のある仕事をしていて、バリバリと働いている方からの依頼は珍しくありません」

 清潔感があり、仕事もしっかりこなしている人が実はゴミ屋敷に住んでいる、なんてことはよくあるのだ。

 前出の新家さんは訴える。

ゴミ屋敷の問題は部屋を片づけて終わり、ではありません。社会全体で考えていかなければいけない問題です。専門家とも連携し、依頼者のケアをする必要もあります」

 新家さんはある依頼者の男性がこぼした言葉が忘れられないという。すっかりきれいになった部屋で彼は言った。

「“どこで寝たらいいんだろう”って。部屋がきれいになったからどこでも寝られるはずなのに……ルーズだったからゴミ屋敷にしてしまった、では説明できない根深さがある」

 孤独、ストレス、病気……抱えた問題は自宅でゴミに形を変え、たまっていった。

 ゴミでしか隠せなかった心の隙間があるようだ。

【あなたの家は大丈夫?ゴミ屋敷度チェック】

□外出を自粛し、自宅にいる時間が増えた
□帰宅すると疲れてやる気が出ない
□仕事やプライベートでストレスがたまっている
□ネットショッピングや出前を注文する機会が増えた
□ゴミを出す時間に間に合わないことがある
□購入したのに着ていない洋服がたくさんある
□ゴミの分別の仕組みがよくわかっていない
□靴下や携帯電話の充電器など同じものがいくつもある
□部屋の中で物をよくなくす
□床にゴミや空いたペットボトルがいくつも落ちている
□ゴミの入った袋が室内にいくつもある
□部屋のゴミを自分ひとりで片づけることは不可能

 1~4個は十分注意して、5~8個はだいぶ危険、9個以上、もしくは太字にチェックがついた場合は即、専門家に相談を※専門家への取材をもとに編集部で作成

お話を聞いたのは……株式会社テンシュカク●田中さん(統括部長)新家さん(代表取締役)
関東・関西を中心にゴミ屋敷の清掃や遺品整理などを担う。2019年には同社が中心となり、一般社団法人『ゴミ屋敷清掃士認定協会』も立ち上げ、清掃業者の認定や育成にもあたる。https://777fukujin.com