かつてないアクション映像の誕生
佐藤健が演じる実写版・剣心について、語るべき観点はいくつもあるが、その中でも最も重要な要素がアクションである。
このシリーズの製作においては、大友啓史監督の指名で、世界を舞台に活躍する谷垣健治がアクション監督に起用された。そして、谷垣監督、および製作スタッフたちは、妥協なきトライアルを積み重ねながら、今まで誰も観たことのなかったアクション映像の実現を目指し始めた。
そして、その遥かな高みを目指すスタッフたちの期待を一身に背負っていたのが、一作目の撮影当時22歳の佐藤健であった。
彼は、まさに自身の役者人生を懸けるかのようにして、「このアクションが格好よくなければ、僕は役者を辞めます」と宣言。そして、ストイックで誠実な姿勢と懸命な努力によって、スタッフがもともと抱いていた期待を遥かに超越したアクション映像を生み出してみせたのだ。
縦横無尽に展開していく殺陣をベースとしながら、肉弾戦と銃撃戦、更にはパルクールの要素まで取り込み、そして一つ一つのアクションを、極めてスピーディーでロジカルな編集をもってして紡いでいく。
その結果、もはや時代劇という既存のフォーマットには決して収まりきらない未知のアクション映像が生まれた。前作が公開されてから約7年の月日が経つが、筆者は、このシリーズを超える日本アクション映画は、まだ現れていないと思っている。
そして、極力CGやワイヤーワークに頼らない形で撮影されたアクションシーンの数々は、戦うことで贖い続ける剣心の壮絶な生き様を、圧倒的にリアルなものとしてスクリーンに刻みつけた。原作ファンの期待を裏切らないだけではなく、まさに身をもってして、独自の剣心像を確立させた佐藤健の功績はあまりにも大きい。
なお、このシリーズにおける過酷な撮影の裏側は、佐藤健の公式YouTube上の企画「Road To Kenshin」にて公開されている。超高速の殺陣やドリフト走行のシーン、命綱なしで敢行された屋根の上を全速疾走するシーンなど、そうした数々のアクションシーンのメイキング映像は、一つのドキュメンタリーとして非常に見応えのある作りになっている。