ただ事件が起こり、それを解決すれば終わりということではなく、そこにしばしば警察組織の不正や政治的思惑といった問題が絡んでくる。東大卒のキャリアとして警察官になった右京が特命係という“陸の孤島”に追いやられたのも、そうした組織の闇に見て見ぬふりをしなかったからだ。
このような警察ドラマの流れをつくったのは織田裕二主演の『踊る大捜査線』(フジテレビ系、1997年放送開始)からだと言えるが、『相棒』はその流れをくむ作品である。だからこそ、岸部一徳が演じた小野田官房長のような人気キャラクターも生まれた。
そしていうまでもなく、先ほどふれたバディものとしての魅力がある。
これまで寺脇康文、及川光博、成宮寛貴、そして反町隆史の4人が右京の相棒役を演じてきた。寺脇康文演じる亀山薫が熱血漢なら、及川光博演じる神戸尊はクールといったように、それぞれ個性が異なる。そのうえで、最初は反発していたのが行動を共にするうちに、相棒たちは次第に右京を理解するようになっていく。
また、シリーズを重ねるなかで、2人を取り巻く捜査一課刑事の伊丹憲一や鑑識の米沢守など個性豊かな脇役も“キャラ立ち”し、人気を集めるようになったのも見逃せない。
視聴者を飽きさせない「複数脚本家制」
もう1つ、『相棒』の長寿シリーズ化の理由として、複数の脚本家による分担制も挙げておきたい。
日本では、連続ドラマの脚本家は1人で務めることが多い。長丁場のNHK連続テレビ小説や大河ドラマであってもそうだ。一方、『相棒』では同じシーズンの脚本を複数で担当する。たとえば、season 1では12話を3人の脚本家で分担した。最新のseason 19では、20話を9人で分担している。
脚本家はそれぞれ得意分野が異なるので、自然に『相棒』の話も多彩なものになる。本格的な推理ものもあれば、時事問題や社会の矛盾を扱った社会派の回、人情の機微が描かれた切ない回もある。また時には、便器にはまって動けなくなり、餓死する被害者が登場するといった、ちょっとコミカルな回もある。こうした作風の幅の広さが、ほかにはない『相棒』の魅力になっている。