父親は期待されていない!?
ドラマは現代社会の映し鏡ともいわれるが、シングルファーザーものも、「昔ではありえなかったシチュエーションが多くなった」と竹山さんは感想を述べる。
「『監察医 朝顔』(フジテレビ系)には、“これが現代のドラマか”と、ハッとしましたね。
上野樹里さん演じる法医学の監察医の娘が中心で、時任三郎さん演じる刑事である父親は、完全に娘のサポート役に徹しています。
これは数十年前だったら、ありえない話、コメディーとしてだったらあったでしょう。でも『朝顔』は、どちらかというとシリアス寄りのドラマ。時代は変わったな、と思います」
山崎さんは、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)にこう見解を示す。
「父親が何もできず、難しい年ごろの子どもばかりの父子家庭に、完璧な家政婦がやってくる。
つまり、登場人物たちも視聴者も、最初から父親に期待をしていないし、むしろそのままでいいとさえ思っている(笑)。父親はこの程度でいいんだ、という設定は斬新でした」
また、幼い娘とふたり暮らしの父親が若年性アルツハイマーを発症するという『ビューティフルレイン』(フジテレビ系)についても同じことがいえる、とも。
「成長することはない父親を、ただ見守るしかできない幼い娘……って、“父親の威厳はこうあるべきもの”と考えていた時代には思いつかない話だったでしょうね。
とはいえ、芦田愛菜ちゃんみたいに、演技が上手な子役が出てくるだけで号泣は鉄板なのは、今も昔も変わらないんですけど(笑)」
かといって、「父子の絆」ものに人気がなくなったわけではない。長瀬智也の事実上の引退作となった『俺の家の話』(TBS系)も、母がいなくなってからが長い、父と子どもたちの話だった。
「ひとえに、脚本自体がおもしろかったから、支持されたのでしょう。また、大人になってからの親子ならではの感情のぶつかりあいというのは、普遍的なものがありますからね。そういった、普遍的な感情を持つことも、親子の絆なのかもしれません」(竹山さん)
いつの時代でも、親子の複雑な感情は、ドラマになりうるということなのだろう。