大抜擢は失敗しやすい?
一方、同率2位の『突然ですが、明日結婚します』は、「納得の低視聴率月9」と異口同音に言う。結婚し専業主婦になることを夢見る高梨あすか(西内まりや)と、恋愛のトラウマを抱えるイケメンアナウンサー・名波竜(山村隆太)とのラブストーリーを描く、マンガ原作のドラマ─なのだが、「山村隆太」の名を聞いて、「誰?」と思った人も多いはず。実は彼、人気ロックバンド「flumpool」のボーカルを担当するミュージシャン。俳優活動は現在まで片手で数えるほどしか経験していないため、ピンとこないのも当たり前だ。
同ドラマは、事前に計画されていたドラマが暗礁に乗り上げ、急きょ制作されたことが制作発表で明かされた“いわくつき月9”。西内、山村のキャスティングもドタバタで決まるなど、見切り発車がそのまま低視聴に結びついた正真正銘の反面作品と言っていい。
「西内まりやさんは被害者(笑)。当時の彼女は、10代からカリスマ的な人気があって、着実にステップアップしていた。もっとよい作品に巡り合えたら、彼女の現在は違っていたのでは」(かなつさん)
このドラマの影響なのか、西内は事務所から独立し、しばらく表舞台からも遠ざかることに。月9は、タレント生命すら左右するのかも……。
山村同様、大抜擢&低迷したのが、吃音症のヒロインの少女(新人の藤原さくら)と、元ミュージシャンで臨床心理士の主人公(福山雅治)のラブストーリー『ラヴソング』だ。
「大抜擢なんだろうけど、ドラマをあまり見ない時代に主演クラスの大胆なキャスティングはデメリットのほうが大きいと思う」とかなつさんが気遣うように、“愛想のない子”に映ってしまった藤原には、視聴者から厳しい声も届いた。
「ドラマファンとしては、主要キャストにある程度“ザ・俳優”みたいな柱があったほうが見てみようかなと思うんじゃないかしら。山村さんのようなミュージシャンを起用することで、楽しい化学反応も起きるとは思うんだけど、やはり主要キャストの存在は不可欠なんじゃないかな」(ウッチャリーノさん)
'16年1月の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を皮切りに、続く『ラヴソング』、『好きな人がいること』、『カインとアベル』、『突然ですが、明日結婚します』、『貴族探偵』──6クール連続でワーストランキングに名を連ねるように、主演クラスを見ると、どこか物足りない感があるのもたしか。『好きな人がいること』は、夏の海でイケメンたちがヒロイン(桐谷美玲)を奪い合う月9の王道路線だったが惨憺たる結果に。2大スターが共演した反町×竹野内の『ビーチボーイズ』と比べるのは酷だけど、やっぱり小粒感は否めない……。
『貴族探偵』の後に始まった山下智久主演の『コード・ブルー』が、平均視聴率14.8%という高視聴率をたたき出したことを考えると、月9の勝利の方程式は物語×スターということも見えてくる。山Pは、患者のみならず暗黒期の月9をも救っていたことに!
「月9の主役って、木村拓哉さんを筆頭にスターが務めていたイメージが強い。スターがいるから脇役にどんな人を配置するのか楽しみになる。その脇役が頭角を現して、違うドラマでさらにポジションを上げていく。そういうシステムが月9にはあったと思うけど、今はそれが機能していない」(かなつさん)