女子校だった高校時代に同性が気になった。人気者であるその友人に、小野さんは好意を抱きつつ、どこか違和感を抱いていた。

「何が?って言われても、わからないんです。“ねえ?”と呼ぼうとして身体に少し触れたときに、“え?”と思った。告白しようと思ったわけでもなく、付き合いたいと思ったこともありません」

 小野さんは当時、異性愛や同性愛のことは知識としては知っていた。しかし、両性愛者については知らなかった。

「もしかして同性愛者かもと思いましたが、男の子を好きになったこともあります。何だろう?と思っていましたが、その当時は深掘りしないほうがいいだろうと思ったんです」

 同級生に対する感情が恋なのかどうかはわからないでいたが、大学時代は男性と付き合っていた。友人に相談しても、“若気の至り”と言われ、気にしないようにした。

「どこにでもいる共働き家族です」

 その後、20代で結婚、子ども2人を出産した。夫は留守がちで、孤独なワンオペ育児に悩む中、自分を見つめた小野さんは「もしかしたら同性愛者ではないか」と思い始める。当事者に会いたくなりインターネットで検索、セクシュアリティー(性のあり方)に悩む人の居場所になっているサイトを見つけた。

 そこでの交流を通じて、「私は異性愛者ではない」と思った小野さん。そんな中、現在のパートナーである西川さんと出会う。当時は、西川さんも男性と結婚していた。

「彼女は私のところに自然に入ってきました。私はたまたま彼女を好きになったんですが、性別に関係なく、彼女以外の人を好きになるんだろうかと思ったりします。正直わかりませんが、彼女ひとりを好きになって満足しています」

 その後、2人とも離婚し、一緒に住むようになっていく。

 現在は小野さんと西川さん、そして、互いの子ども3人の5人家族で暮らす。同性カップルでもあり、子連れ再婚してできた“ステップファミリー”でもある。

「だんだん家族になっていった感じですので、一緒に住むことに迷いはありませんでした。よく“新しい家族”と呼ばれることがあるんですが、自分のなかで新しさはないんです。どこにでもいる共働き家族です」

 子どもたちの様子はどうだったのだろうか。

「お互いに離婚する前から、長男はよく彼女に遊んでもらっていました。私が次男の子育てで手を取られていたときは、よく長男と一緒に公園に行ったりしていましたね」

 家族では親も子どもも、お互いを名前で呼び合う。こんなきっかけがあったからだ。

「(再婚してできた)娘が、長男を“お兄ちゃん”と呼んでいたのですが、同級生から“おまえのお兄ちゃんとは違う”と言われたことがありました。そのとき、娘は“なるほど”と思ったようで、それから“お兄ちゃん”と呼ぶのをやめました。それ以来、うちの家族では、お互いを名前で呼ぶようになりました」