実に目まぐるしい10数年だが、もともと、色男とダメ男には紙一重的なところがある。昭和のプレイボーイ・火野正平が別れた相手から不思議と恨まれなかったように、そこをうまく行き来できれば、ニクめないキャラにもなれるのだ。石田がなんだかんだ言って生き残れたのも、そのあたりが面白がられたからだろう。
本人もうすうす、そういう生き方を狙っていたのかもしれない。というのも、'98年、松田聖子が最初の再婚(いわゆるビビビ婚)をした際、石田はこんなことを言っていた。
「すごいな、どんどん先に行っちゃうね」
確かに、当時の聖子には、生涯に8度結婚したハリウッド女優、エリザベス・テイラーを思わせるような勢いがあった。いわば、スキャンダルもまた芸という、騒がれてナンボのザ・芸能人的な生き方だが、石田もそういうものにちょっと憧れているのかと感じたものだ。「先に行っちゃうね」というのは、自分も続いてみたいという気持ちなしでは、出てこない言葉だろう。
実際、その後、3度目の結婚をして、子どもも誕生。母親が違う子どもたちや、孫たちの仲がよかったりするというエピソードはそれなりに面白い。彼ならではのザ・芸能人的生き方で、最近までけっこう楽しませてくれていたわけだ。
とはいえ、疲れてしまったならしかたない。レジェンドの余生を静かに見守るとしよう。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。