メタボも糖尿病も歯周病が悪化させる

 奥歯がカギを握るのは、認知症だけではありません。実は生活習慣病とも密接な関係があります。

歯周病の人はメタボ(内臓脂肪型肥満)になりやすいことがわかっています。そしてメタボは、糖尿病や高血圧症、心血管疾患など、さまざまな病気の原因になります。歯周病によって奥歯がグラついたり、奥歯を失ったりすると、かたいものが噛みづらくなり、ご飯などの炭水化物や脂質の多い食事ばかりとるようになります。よく噛まずに飲み込むため、早食いになることも肥満を促進します。また、歯ぐきで作られる炎症性サイトカインが血液中に入り込み、血糖を分解するインスリンの効きを悪くして、糖尿病を悪化させます

 逆に、糖尿病の合併症で歯周病が起こることも多いため、すでに糖尿病と診断された人や血糖値が高い人は、歯周病にも注意が必要です。

肝硬変や肝臓がんのリスクを高める

「私はラットを使った実験で、歯周病が脂肪肝の原因になることを発見しました

 脂肪肝とは、肝臓内に中性脂肪がたまった状態のこと。脂肪肝になると、肝硬変から肝臓がん、狭心症や心筋梗塞になるリスクが高まります。

「一般に、脂肪肝は飲酒量が多い人に起こりやすいとされますが、飲酒しない人に脂肪肝が発生する『非アルコール性脂肪肝疾患(NASH)』もあります。横浜市立大学が「NASHの患者で歯周病もある人」を対象に、歯周病の治療を行ったところ、肝臓の機能が改善したという研究結果が報告されました。また広島大学によって、歯周病菌が肝臓に到達してNASHを引き起こすメカニズムも解明されました」

 歯周病は確実に、脂肪肝から肝硬変、そして肝臓がんになるリスクを高めることが証明されたのです。

イラスト/水口アツコ
イラスト/水口アツコ

恐ろしい心疾患を虫歯が引き起こす

 歯を失う原因として、歯周病の次に多いのが虫歯。

「重度の虫歯になると、虫歯菌は簡単に血液の中に入り込み、ネバネバした歯垢を分泌しながら、心臓の内壁である心内膜や心臓内の弁などにくっついて固まります。この症状は感染症心内膜炎といわれ、手術が必要となったり、ときには死に至ることもある恐ろしい病気です」

 歯周病とともに、虫歯も予防することが重要です。