ところが政府の危機感は薄く、6月17日の記者会見で菅義偉首相は、会場に観客を入れて開催する意向を表明。

 翌日にコロナ分科会の尾身茂会長が「主催者や政府、開催地が一体となって取り組むべき感染対策がほとんど議論されてこなかった」と批判する事態に発展している。

23区の区長が出した答え

 そんな状況下で、東京23区の区長たちはアンケートにどう答えたのか。

 集計したところ、「賛成」したのは7区で、江東区、墨田区、千代田区、目黒区、港区、江戸川区、大田区

「その他」と回答し賛成と明言することは避けたものの、開催に前向きな意見を寄せたのが、杉並区、中央区、北区、世田谷区だ。

 ほかに「(判断は)検討中」「感染状況を見て決める」などという回答をしたのが葛飾区、板橋区、台東区、文京区

「回答する立場にない」と意見を明言しなかったのは中野区、荒川区、足立区だ。

 その中で足立区だけは開催の賛否については語らずも、「小・中学生の会場での観戦など(安全性が)不透明な部分も多く、苦慮しています」と23区で唯一、開催についての危険性を懸念する考えを示した。

 豊島区、新宿区、練馬区、渋谷区、品川区からは回答がなかった。

 そして驚くことに、「反対」を表明した区はゼロだった。

 住民の命が深刻な危険にさらされるという危機感のある首長はいないということなのだろうか……。

 この結果に本間さんは、

「想像どおりの結果ですね。とにかく政府は、やりさえすれば成功と言う。区長たちの回答からは、国や都が責任を取るから自分たちは判断しないという考えが感じられますね」

 賛成した自治体については、

「江東区は五輪会場となる施設が最も多い区です。他の賛成する区も、五輪の会場があるところがほとんど。

 中止になれば本番に向けてさまざまな準備をしてきた予算もムダになるため、批判にさらされてしまう。今さら反対しても仕方がないということでしょう」

 感染拡大が収まらない状況下で強行開催される東京五輪。もはや、自分の命は自分で守るしかないようだ。