ヨーロッパやブラジルで起きているようなクラスターを見ていると、決して他人事とは思えなくなってくるが、果たして東京で起きないと言えるのか。東京五輪を有観客で行った場合のコロナ感染について、医師に話を聞いた。

「結論から言って、観客を入れてもクラスターは起こらないと思います」

 そう話すのは、新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦先生。

「コロナの感染は、ほとんどの場合が飲食を介して感染者の唾液で感染します。席を1つ置きにして間隔を空ける、お酒や食べ物といった水分補給以外の飲食を禁止するといった対策をとることで、会場内で感染することはほぼないと思います。もちろん客席で大声を上げて、顔に唾液がかかるような環境では感染してしまいます。

 そのため、ヨーロッパの観客のように、密集してマスクを付けず、大声を出すようなことはしないという前提です。ただ、この1年、日本人は基本的にはまじめに感染予防を守ってきましたから、会場でそういった振る舞いをすることは少ないのではないかと思います」(岡田先生、以下同)

試合後に大騒ぎするサポーター

 ただ、問題は会場だけではない。

ユーロの試合が行われた後に、会場の外でサポーターが大騒ぎしている映像を見ましたが、そういったことはもちろん、食事や飲み会に行くのも危険です。試合が終わったらまっすぐ帰宅する。クラスターを起こさないためにも、徹底してほしいですね」

 日本はワクチン接種が遅れており、欧米は進んでいると言われる。実際にユーロではマスクをつけない観客が多く、アメリカではマスクなしの音楽ライブなどが開催されだしている。ワクチンを接種していれば“ノーマスクでOK”なのか。

「それは絶対ダメですね。ワクチンそのものが世間で言われているほど“効かない”という調査結果は、世界的に見ると実は多い。有効率95%とうたっていますが、実際にはこれよりもかなり低いと考えます。またワクチンを2回接種したとしても、有効期限はせいぜい3~6か月。日本はゆっくり接種が進んでいますが、2月くらいに接種した人はもう期限が切れているかもしれません。

 ワクチンを摂取しているか、していないかは、感染予防にはあまり影響しないと思います。ヨーロッパの大会で感染者が多くなってしまったのは、もともとの感染者が多いうえに、先ほど話した感染対策がまったくなされていないことが原因でしょう」

 岡田先生は、今取り沙汰されている“有観客か無観客か”よりも、はるかにリスクが高いことがあると指摘する。

「今、日本ではプロ野球やJリーグなどでは観客を入れて開催していますが、感染源にはなっていません。国内の人が動くのであれば、きちんと対策を取っていれば、リスクがないとは言いませんが、それほど問題があるとは思いません。しかし、選手や大会関係者など合わせて海外から9万人が来日すると言われていますよね。その人数が入ってくること自体が恐ろしいですね。

 ニュースでもやっていますが、空港での検疫が心配です。今現在、最も厳しくした対応を見ても、まだ不十分だと私は考えます。外国から来日した人は最低限10日間は隔離するべきです。10日間隔離して症状がなくて、はじめて感染していないという安全性が担保されます。PCR検査の是非も問われていますが、4割ほどは見落としがあると言われています。検査で陰性だったから、すぐ自由に行動していいという話では決してありません