また、その際、一緒に見守る人々がいることで、参加者への思いはさらに募っていくのだが、そこにこそテレビ番組の強みがある。テレビは「より多くの人々が同じコンテンツを同時に見て楽しめる」というライブ感では、いまだネットツールに負けていない。なかでも『スッキリ』は生放送ならではのライブ感があるだけに、収録した映像とは思えないほどの緊張感を醸し出せる。

 実際、『スッキリ』で『THE FIRST』が放送される日は、常に関連ツイートが飛び交い、多くの人々がリアルタイムで盛り上がっている。つまり、オーディションコンテンツは、テレビが“主”で、ネットが“従”として楽しむのが王道ということだろう。もしテレビでの放送がなくHuluやYouTubeの配信だけだったら、一部ファン向けのマニアックなコンテンツという位置づけだったのではないか。

 また、『スッキリ』で放送することで、若年層から中高年層まで、幅広い世代の人々に見てもらうことができる。事実、「自分の息子や孫を応援するように見る」という親世代の人も少なくないという。

昨年の成功体験とコロナ禍の好影響

『THEFIRSTBOYSGROUPAUDITION2021』ホームページより
『THEFIRSTBOYSGROUPAUDITION2021』ホームページより
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  『スッキリ』の制作サイドから見ても、多くのスポンサーから若年層視聴者の獲得を求められる中、オーディションコンテンツの放送は渡りに船。

 SKY-HIが「ダメ元でオーディション企画への密着を『スッキリ』に打診したところ快諾してもらった」と明かしていることも、両者の相思相愛ぶりを裏付けている。

 もちろん『スッキリ』が快諾したのは昨年の『Nizi Project』という成功体験によるところが大きい。さらにその成功体験の中には、プロデューサー・J.Y. Parkの人気爆発も含まれている。

 J.Y. Parkが素晴らしかったのは間違いないが、現在のSKY-HIも決して負けていない。「クオリティファースト、クリエイティブファースト、アーティシズムファースト」というオーディションコンセプトはブレることなく、1か月の合宿を参加者と過ごすなど、真摯に向き合う姿勢が視聴者の胸を打ちはじめている。

 J.Y. ParkもSKY-HIも、その言動が、企業や家庭、社員や家族の発展や円満につながるものとしてサラリーマンや主婦に響いているのだ。とりわけ昨年から今年にかけて、コロナ禍によるテレワークやステイホームで、「朝の情報番組を家で見られる人が増えた」ことも追い風の1つと言えるかもしれない。

 『THE FIRST』は、まもなく最終審査に突入するが、クライマックスに向けてますます盛り上がりを見せるだろう。そして来年には、『Nizi Project Season2』が『スッキリ』で放送されるのではないか。

 もしかしたら『THE FIRST』で惜しくも脱落した人が、来年の『Nizi Project Season2』にエントリーし、再び『スッキリ』に登場するかもしれない。もしそうなったらネット上の熱狂は確実であり、応援のボルテージはさらに上がっていくはずだ。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
ウェブを中心に月30本超のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。