23日に行われる東京五輪・パラリンピックの開会式で楽曲制作を担当するミュージシャンの小山田圭吾(52)が、過去に雑誌のインタビューで障害のある同級生に壮絶ないじめをしたことを“自慢気に”語っていたニュースが世界中に拡散し大問題になっている。
海外から注目された日本の人権感覚
共同通信によれば、米メディアは「五輪を悩ませる最新のスキャンダル」などと相次いで報道しているという。またアメリカのABC、イギリスのガーディアン、フランスのフィガロをはじめ、シンガポールやメキシコなどのメディアでも相次いで報じられている。
英有力紙ガーディアン(電子版)は、「東京2020作曲家が、障害のあるクラスメートへのいじめについて謝罪」、英デイリー・テレグラフ(電子版)も「東京オリンピックの主催者は、小山田圭吾が精神障害の同級生を虐待していると述べたインタビューが再浮上したにもかかわらず、開会式の作曲家として継続することを喜んでいると主張している」などと詳細に伝えている。
小山田は16日、Twitterで謝罪文を発表。
「過去の言動に対し、自分自身でも長らく嫌悪感を抱いていたにもかかわらず、これまで自らの言葉で経緯の説明や謝罪をしてこなかったことにつきましても、とても愚かな自己保身であったと思います」などと謝罪したうえで、あらためて開会式担当を続ける意向を表明。東京五輪・パラリンピック組織委員会も武藤敏郎事務総長も「十分に謝罪し、反省している」として小山田の続投方針を示した。
「当時の記事はネット上でも一部読むことができますが、いじめではなく、もはや犯罪のレベルといえるほど残酷な行動です。これほど差別的で暴力的な行為をした人物が五輪やパラリンピックに関わる資格はあるのかと批判されて当然の内容。小山田はもちろんですが、この人選こそ最悪です」(スポーツ紙記者)
加藤勝信官房長官は19日午前の記者会見で、小山田の過去の発言に対し「主催者である組織委員会で適切に対応していただきたいし、対応を取っていくことが必要だ」と起用の再考も含めた対応を促した。
同日、小山田は関係者に対し楽曲参加を辞任する意向を伝え、19時ごろ、Twitterで「私がご依頼をお受けしたことは、様々な方々への配慮に欠けていたと痛感しております」と辞任を発表した。
「そもそも五輪組織委は、女性蔑視発言で森喜朗元首相が会長を辞任、タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱する『Pig』発言でクリエイティブディレクターの佐々木宏氏が辞任、そして今回の小山田の一件。
ここまで立て続けに人権感覚の欠如ぶりを世界にさらしても何ら対応しないのは、五輪が開催されれば何でもあり、と思われても仕方ないです。こうした人権感覚に欠けた内向きで閉鎖的な組織がまかり通っている国という見方をされるでしょう。新型コロナウイルス対策にしても、すでに不完全で脆さが散見されています」(全国紙記者)
オリンピック憲章の根本原則の6番目にはこう記されている。
《オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある》
もしこのまま開会式で小山田の曲が流れたら、世界中の人々はどんな思いで聴いていたのだろうか。犯罪レベルのいじめをしていた人間を五輪で起用したという事実が国際的評価を著しく下げることの意味を重く受け止めなければいけない。