2回目の結婚相手は鈴木保奈美、'90年代を代表するトップ女優です。石橋の離婚から間もないこと、保奈美が妊娠していたことから、不倫だったのではという憶測も飛び交います。そのせいか、結婚会見の際はおめでたいムードに欠けるというか、彼女がムスっと不機嫌だった印象があります。保奈美は芸能界を引退し、専業主婦となります。3人のお子さんが生まれ、石橋がテレビで他の女性の話をすることもなくなりました。

石橋が「時代についていけない人」の代名詞に

 が、どんなスターも時代には勝てません。2015年に『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)内の企画、「新・食わず嫌い王決定戦」で、石橋が女優・西内まりやの胸を触ろうとし、ゲストであるハリウッド俳優、ヒュー・ジャックマンに「そんなことをしてはダメだよ」とたしなめられたことがありましたが、日本の視聴者も次第に外国人と同じようにセクハラ、パワハラに敏感になってきました。こうなると、一世を風靡した石橋の“いじり芸”は通用せず、「時代についていけないヤバい人」の代名詞になってしまいました。

 番組の視聴率は下がり、『みなさんのおかげでした』は2018年3月に終了します。石橋は2021年1月31日放送の『情熱大陸』(TBS系)で、当時を振り返って「人生のほとんどを賭けていた番組でしたし、それが終わってしまって、ちょっと精神的にもあまりよくなかった」「その後、テレビの仕事も少なくなってきて、戦力外通告だなと。やりたくてもできない」と苦悩を明かしています。

 一方、保奈美は2011年に大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』で女優復帰します。ブランクがあるにも関わらず、今に至るまで仕事が途切れないのはスターになる星の下に生まれたからではないでしょうか。夫の石橋は仕事が減ってしまったわけですから、こうなると、結婚当初は石橋>保奈美だった関係が、石橋<保奈美になってしまいます。力を合わせて苦境を乗り切れる夫婦もいるでしょうが、どちらかの精神状態がヤバくなると、慰めや励ましを哀れみとかダメ出しと感じて関係性が悪くなるのはよくある話。二人ともスターで、相手の置かれている立場や気持ちがわかるだけに、逆に歩み寄るのは難しかったのかもしれません。

 最近の保奈美は女優業だけでなく、文筆の世界にも進出しています。昨年出版されたエッセイ集『獅子座、A型、丙午。』(中央公論新社)を読んでいると、最初は軽やかな筆致で身の回りのことを綴っていた保奈美がどんどん内省的になっていくのがわかります。「外で働く女は(仕事と家庭を)両立させなければならない、という紋切型の思考から抜け出したいよ、いい加減」「子どもに関することは女親だけの担当なのか」というように、女性であることの意味について思いを巡らしていきます。