ジェンダーに対する裁判官の無知
わずか1か月の間に4件も無罪判決がでたことは、女性たちに大きな衝撃を与えた。
これらの不条理と思える判決をきっかけに“性暴力を許さない”をスローガンに掲げたフラワーデモが各地で開催された。主催者のひとりである作家の北原みのりさんは今泉被告の判決をどう見たのか。
「素直に嬉しいです。やっとまともな視点を持った裁判官が現れたのだと。
今年の3月にも無罪が確定した裁判がありました。11年前に、当時17歳の女性に性的暴行をしたとして強姦罪に問われた男に対して、横浜地裁は“苦痛は筆舌に尽くしがたいことは明らか”と指摘しながらも、“性交があったとは断定できない”としたんです。
ほとんどの被害女性は被害の8割も話せていないといいます。思い出すのも恐ろしいし、話したくないし話せないという状況にある。一方で加害者は雄弁に無罪を主張する。裁判官のジェンダーに対するあまりの無知に、恐れを感じていました」
といい、今回の判決の歴史的意義を込めて評価する。続けて、
「今回の量刑は極めて適正だと思っています。むしろ今までの判決がおかしかった。被害にあった女性がその後の人生がどれほど苦痛に満ちたものになるのか。人生を中断させられるんですよ。重くて当然です」
実は過去にも30年を上回る判決が下された性犯罪事件がある。
「9人の女性を暴行し懲役50年の実刑判決となった静岡地裁沼津支部のケース('11年)、15人の女性に暴行し懲役47年の実刑判決となった大阪地裁のケース('13年)があり、加害男性がすぐに出所しないということは、いずれのケースでも被害女性たちに大きな安心を与えました」(司法記者)
前出の北原さんは、女性たちが“おかしい”と表明できる場所として毎月11日、フラワーデモを開催している。
「日本の司法はまだまだ男社会で男目線です。女性たちには声をあげれば同じ仲間がいることを知ってほしい。今後も被害者の視点に立った判決が下されることを望みます」