子どもが父親にさせてくれている
今回、珍しく自身と役を重ねたのは、私生活で父親になったことも関係しているのか?
「大いに関係していると思います。やっぱり結婚する前、自分ひとりで生きていたときにはまったく考えなかったことだったので。自分に家族ができて、“もし自分がいなくなったとしたら”とよぎってしまって。極論ですけど、自分が死ぬのは構わない。けれども、家族に悲しみだけじゃなく、さらに罪をかぶせることになったら、それだけは許せない。鳥居はたぶん、それ以上のものを背負っていただろうと思います」
人生の階段を上り、自分だけの命ではなくなった重み。演技にもさらなる広がりや深みが加わった実感があるのでは?
「実感はないですね。自分自身の芝居の評価や実感って、周りが判断してくれるものなのかなぁと思うので。映画の賞と同じで、自分自身だと意外とわからないことなのかもしれないです。ただ、人を見ているとそう思う瞬間っていうのはあるんですよ。(永山)瑛太とか小栗(旬)とかに子どもができて、“なんか父の顔になったな”って思った瞬間があったんですよね、僕の中で。ひとつ大人になったというか、男の顔になった気がして。
でもたぶん、本人たちは意識してないし、わかってないと思うんですよ(笑)。それは感覚でしかないし。僕も同じような感じなのかなぁ? たぶん、父になるっていうのは、結局、子どもが父にさせてくれているんだなって思いますね。
子どもって、なんで笑っただけで幸せがめぐってくるんだろうと不思議なんですよね。ただ歩いているだけで可愛いな、命って尊いなって思える。子どもを育てるのは精いっぱいだけど、すごく子どもに学ぶことも多い。だから、これから子どもにもっともっと成長させてもらおうって期待をしています」
終戦から76年、俳優としてできること
「難しい質問ですね(笑)。うーん。代弁者、まで言ってしまうと、そんなに僕たちは偉いものじゃないと思うんですよ。だけど、伝えていかなきゃいけないことって山ほどある。過去を過去で終わらせちゃいけないこともいっぱいあると思うし。そういう意味では、僕たちは、ある種、そういう使命感を負っていていいのかなっていう思いはあります。
このドラマは正直、見てもらえれば絶対に届くという自信があります。この作品を通じて、自分自身にもっとできることがあるんじゃないかとか、もっとこういう人間になりたいとか、何か少しでも心の中に芽生えるものがあったら、僕たちはすごく幸せです」
終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』
8月13日(金)夜10時〜(NHK総合)
出演/妻夫木聡、蒼井優、永山絢斗 ほか
スタイリング/片貝俊