かと思えば、市村も彼女について《まったく舞台役者っぽくなくてナマな感じがあり》《本当に面白い女優さん》などと自著『役者ほど素敵な商売はない』に書いている。つまり、お互いが意外性から恋におちたのである。しかも、不倫やら篠原父の反対やら、障害まである。これで燃え上がらないわけがない。
加えて、ふたりは結婚後、さらに飛躍していった。おかげで、役者同士の理想的な夫婦というイメージまで獲得したわけだ。
とはいえ、恋の刺激は永遠ではない。前出の番組で彼女は、会話中、頻繁にダジャレを挟んでくる夫とのこんな近況も語った。
「あのダジャレは言われると、ホントに私もうダメで。今もう何を言っても、笑えなくなっちゃってるんです。(昔は)アハハハ、アハってってやってたのに」
長年連れ添えば、よくある変化だが、そこで我慢できるかが一生添い遂げられるかどうかの境目だ。しかし、刺激を求めるタイプの篠原には無理だったのだろう。
これに対し、市村もダジャレを笑ってくれなくなった妻が前ほど可愛く感じられなくなったのかもしれない。最初の妻とは19年、今回は16年で別れているので、それくらいが彼にとって同じ相手と夫婦でいられる長さにも思える。
要はふたりとも、飽きちゃったということだ。むしろ、よく続いたというべきかもしれない。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。