長崎で先行公開されている、高島礼子主演の映画『祈り-幻に長崎を想う刻-』が、8月20日より全国順次公開に。原作は“演劇界の芥川賞”こと岸田國士戯曲賞の前身・岸田演劇賞などに輝いた田中千禾夫氏の戯曲『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』。舞台は終戦から12年後、昭和32年の長崎だ。
「私が演じた鹿という女性は隠れキリシタンの末えい。看護師と娼婦、2つの顔を持っています」
焼け落ちた浦上天主堂のがれきに埋もれる“被爆したマリア像”を、忍(黒谷友香)とともに運び出そうと画策する。
「最初は宗教的なお話かな?と思ったんですが、そういうことだけではなくて。これは長崎の原爆の被爆者や戦死者たちの思いを伝えたいと戦う人たちのお話なんです」
日本アカデミー賞の助演女優賞に輝いた『長崎ぶらぶら節』や『龍神町龍神十三番地』など、高島と長崎は縁がある。
さわやかな気持ちになる映画
「なのに、今まで原爆のことをよく知らなかった。本当に申し訳ないと思っています。私はそんなにお勉強をしてきたほうではないんですが、でも現代史ってすごく駆け足だから、なんかあやふやにされていて。
そして広島の原爆の死者は約15万人、長崎は約7万人。数が少ないからか、どこか長崎のほうが軽視されているような感じってあると思うんです。鹿の首には被爆によるケロイドがあるんですが、当時は伝染すると思われていて、被爆者差別もあったんです。そんなことも今回、初めて知りました」
知識がないことは怖いことだと痛感したと振り返る。
「コロナ禍の今、どこかリンクする部分もあると思います。ただ、作品としては説教くさくもないし、不思議と暗くもなくて。最後に泣けるというよりは、さわやかな気持ちになっていただけるはずだと思います」