生活ができないほどの倦怠感
第5波の真っただ中の今、鈴木さんのようにコロナ後遺症で悩んでいる人は数多くいる。東京都は4月、『コロナ後遺症相談窓口』を設けて、都立・公社病院で電話相談窓口を開設した。
だが、認知度が低いのか相談件数は4月が200件、5月が304件、7月になっても281件。感染爆発には伴わない相談件数となっている。実際には、どれほどの人が後遺症に苦しんでいるのか──。延べ1500人以上もの後遺症患者を診てきた『ヒラハタクリニック』の平畑光一院長は、こう話す。
「日本の感染者数は100万人を超えています。その中で、軽い症状を含めると、およそ半数の50万人が後遺症を抱えていると考えています。症状が重い人は、その中の1割ぐらいでしょうね」
同院の患者は年代でいうと30代、40代が最も多く、女性が男性の1・4倍ほど。
「患者さんのおよそ半数が倦怠感の症状を訴えていて、そのあとに味覚・嗅覚障害、脱毛などが続きます」(平畑院長、以下同)
脱毛に悩む前出の鈴木さんには、平畑院長はこんなアドバイスを。
「女性はもともと亜鉛不足の人が多いんです。豚レバーやカニ缶などに多く含まれていますが、食品だけでは足りないので、サプリメントで補うのがいいでしょう」
一方、倦怠感の症状については“思いのほか激しいものだ”と強調する。
「“指1本動かせない”“風呂に入ったら1日、寝込むほど疲れる”。中には“トイレに行っても、紙でお尻を拭けない”ほどの倦怠感が現れた患者さんも。その方はトイレに行く際、親にお尻を拭いてもらったそうです。だるいどころのレベルではなくて、もう生活ができないんです」
言語を絶する倦怠感から、筋痛性脳脊髄炎(きんつうせいのうせきずいえん)・慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気に移行している人も。
「この病気になってしまうと、倦怠感から逃れられなくなる。すると、気分が落ち込んで思考力が低下。本や新聞を読んでも、文字は認識できるが、意味が入ってこなくなり記憶力も低下していきます」